2016年11月8日火曜日

第1486話 うな重だけではもったいない (その5)

文京区・千駄木はぶらり散歩の名所、谷根千の一翼を担う。
谷中銀座、よみせ通りにほど近い千駄木三丁目の道灌山下。
そのT字交差点そばにある、うなぎ店「稲毛屋」の2階にいる。
レバ串の旨さに二人して身をよじっているのだ。

肝串のほうもレバに負けじ劣らじの美味。
よじった身が今度は悶え始めた。
いや、たまりませんな、コイツは―。
恍惚の人になっちまいそうだヨ。

ビール好きの二人は互いに中瓶2本を空けたあと、
清酒に移行することで合意する。
アルコール類のリストが実に立派である。
パリはエトワール広場近く、
「タイユヴァン」のワインリストに匹敵と言ったら言い過ぎながら
品揃えは半端なものではない。
日本酒をウリとする銘酒屋のそれを凌駕さえしている。

吟味に吟味を重ね・・・と言ってもそれほど詳しくはない二人。
選んだのは相方が広島の宝剣(ほうけん)、こちらは山形の初孫、
ともに”冷たいの”をであった。
銘酒のおかげだろう、
心なしか残しておいた肝焼きの一片がグッと引き締まる。
酒は二人で飲むべかりけり・・・でありますなァ。

続いてヒレ焼きがやって来た。
 

ヒレは塩焼きでお願い
レバと肝に比べ、ルックスはずいぶん劣る。
少なくとも食欲をそそる姿ではない。
しかし、人も鰻も見た目で判断しちゃいけやせん。
ヒレ串の美味しさもまた舌を歓ばせてあまりあった。
さすがに身体が慣れてきたせいか、
此度はよじりも悶えもなかったけれど―。

このまま清酒を続けようか、
それとも焼酎に切り替えようか、
迷っているときに女将らしき女性が現れて
「すみません、ご予約いただいたレバわさがご用意できなくて
 肝わさだけお持ちしましが、よろしいでしょうか?」―
無いものは仕方がない、無い袖は振れない、
残念ではあったが快く諒とする。

そうして肝わさが整った。
身がプリプリと躍動
あらかじめ持参しておいた生わさびをすりおろし、
清冽な香りとともにうなぎの臓物を味わう。
先刻の肝は焼かれていたが、こちらは湯がいてある。

肝焼きと肝わさの順序が逆じゃないの―
なんて思いながら芋焼酎・佐藤 黒を
ロックで所望する二人でありました。

=つづく=