2017年1月12日木曜日

第1535話 黒磯で途中下車ふたたび

街にウインターホリデー・ソングが流れるなか、
普通列車に乗り込んで北へ向かう。
行く先は山形県・置賜地方の米沢と赤湯である。
義理と人情、その両方を胸の奥にたたみ込んで旅立った。

最初の乗り換え駅、
赤羽構内のNew Days で缶ビールを購入。
ついでに朝食用のおにぎりも―。
種はあぶりたら子だ。

しっかし、JRもやり過ぎだよなァ。
New Days もだけど、ecute もそうだよねェ。
これじゃ駅周辺の店々はたまったもんじゃない。
駅構内という絶好の立地をカサに
なんでんかんでん総取りのエゲツなさ。
周りがシャッター・ストリートになろうが
まったくお構いなしのあざとい商法に明け暮れている。
民営化の弊害が街を衰退させている。
そう言いながら便利さに負けて利用している自分も自分だ。

宇都宮を経由して黒磯に降り立った。
あれは3年前、やはりここで下車し、
町のそば屋で昼めしを食べたっけ。
そのとき同様に人気(ひとけ)のない商店街を歩む。

店先から熱い湯気を吐き出しているのは1軒の菓子舗。
創業明治元年の、その名も「明治屋」である。
湯気の元は温泉まんじゅうだった。
つい誘われて入店し、
バラ売り1個86円のまんじゅうを買った。
安い!

買ってはみたが、まんじゅうはすでに冷めている。
熱い蒸気でふかすのはあくまでも製造過程、
粗熱を取り去ってから箱詰めするものらしい。
いわば、湯気は一種の客寄せパンダにすぎない。
まっ、そりゃそうだろうヨ、
コンビニの中華まんみたいな具合にゃいかんわな。

そのまま駅に舞い戻り、本日2缶目のビールだ。
甘いものはあまり口にしない、というより、
間食を好まぬ性分だから、まんじゅうを手に取るのは久しぶり。
子どもの頃を思い出す。

ただ、甘いものをビールや清酒の友とするのは苦にしない。
おせち料理のレギュラー・メンバー、
栗きんとんなんか甘菓子さながらなわりに
酒との相性がけっして悪くないものネ。
実際、美味しくいただけた。

福島行き、いや、郡山行きだったな、
列車の乗客に戻って、なおも北へ、北へ。

「明治屋」
 栃木県那須塩原市本町4-3
 0287-62-0444