2017年1月25日水曜日

第1544話 駅弁屋は消えていた?

米沢からの帰途、栃木県・宇都宮で下車。
べつに急ぐ帰路じゃなし、
ふと思って、とある駅弁屋に立ち寄りたくなったのだ。
もう8年ほど前になるが
NHKの番組のロケでおじゃました駅前の「松廼家」が目当て。

宇都宮は駅弁発祥の地といわれる。
しかもこの「松廼家」がその始まりで
創業は明治の中頃とのこと。
売り出したのはにぎりめしが二つにたくあんだった。
東海道を往来する江戸の旅人が携帯する弁当みたいだ。

見覚えのある店舗に赴くと「松廼家」は消えていた。
代わりに餃子屋が営業していた。
いや、ちょいと待てヨ、
駅構内ではいまだに「松廼家」調製の弁当が売られているから
餃子屋はテナントなのだろう。

何だかガッカリして建物を見上げると、
駅弁屋は2階に生き残っていた。
ホッとしたものの、弁当は駅の売店で買うこととし、
近所の散策にいそしむ。
急ぐ旅ではないけれど、
街の中心の繁華街まで足をのばす余裕はない。

駅前から西に走る大通りを行くとすぐ田川の流れ。
川のほとりにマロニエ並木がある。
マロニエはトチノキのこと。
トチノキが多いから栃木県、県花に指定されている。
以前、五月に訪れたとき、
咲き誇るマロニエの花に意表を衝かれた。
頭の中で栃木・宇都宮とフランス・パリがダブッてしまい、
ヘンテコな気分になったのを覚えている。

空腹を感じていたこともあり、
橋のたもとにあった「ビストロ・キャトルズ」に即入店。
手ごろなランチメニューは
パスタが3種にリゾットが1種、
あとは鶏もも肉のローズマリー焼き、
和牛入りハンバーグステーキ、
ブルゴーニュ風ビーフシチューで
いずれも金千円也。

ローズマリーに惹かれて鶏もも肉のソテーを選ぶ。
ほかにコーンクリームスープ、アンチョビ風味のサラダ、
バゲット、バニラアイス、エスプレッソが付いた。
何やら大番振舞いの様相である。

タプナードが添えられ、
カリッと焼かれたチキンは上々のデキ。
東京のビストロならこんな安値でいただけまい。
じゅうぶんに満足して熱海行きだったかな?
列車に乗り込んで缶ビールをプシュっと開ける。

ここでハタと気がついた。
ありゃ「松廼家」のとりめし弁当を買い忘れたぜ。
ビールはちゃんと買ったのにネ。
さっきチキンを食ってきたから、まっ、いいか。

「ビストロ・キャトルズ」
 栃木県宇都宮市駅前通り1-5-2
 028-680-7526