2017年1月18日水曜日

第1539話 年の瀬の米沢(その1)

福島でJR山形線・米沢行きに乗り換える。
車窓から見る景色は
ところどころ残雪が混じるが雪はやんでいる。

途中、停車した駅でホームから物売りの声。
ややっ、こんな場所で駅弁かヨ。
思わずドアから身を乗り出して
「駅弁ですかァ?」―数両先の売り子さんに声を掛けるも
彼の耳に届かず、不発の巻でありんした。

ここは峠駅。
福島―山形―秋田―青森を結ぶ奥羽本線にあって
もっとも標高の高い所にある駅なんだそうだ。
確か2年前にも通った記憶がある。
となると売られていたのは駅弁じゃなく力餅のハズ。
食したことはないが餅の中に餡子が入った菓子だろう。

7~8年前だったか?
NHKの海外向け番組、「Weekend Japanology」のロケで
駅弁発祥の地、宇都宮に出掛けたことがあった。
その時点で日本全国、駅弁の立ち売りは
宇都宮を残すばかりと聞き及んでいたため、
意表を衝かれ、駅売りの声に反応したのであった。

年の瀬を迎えた夕暮れの米沢に到着。
2年前は山形に向かう途中、
乗り継ぎの時間を利用して駅前で一飲した。
その際のひなびた店はチェーン店風の居酒屋に変わっている。
やる気のあまり感じられないオヤジさんだったが
今どき飲食店の個人経営は難しい。

当夜は旧知の友人たちが小宴を催してくれる手筈。
それまで2時間ほどの余裕があった。
チェックインしたホテルには大浴場があり、
一汗流してもよかったけれど、
東北路はそれなりの寒さ、汗などかいちゃいない。

よって街の中心へと歩く。
最上川上流の松川を渡った。
この流れを見るのは実に30年ぶりのことだ。
橋上から四方を眺めると、山、山、そして山。
盆地の宿命ここにあり。

米沢市内唯一のデパート、大沼をのぞいてみる。
今も昔もこの街にデパートはここだけ。
鮮魚売り場はデパ地下ではなく1階だ。
18時前、立て混む時間帯なのに客は2人しかいない。
これで採算が取れるのだろうか?
余計な心配をしてしまうヨ、まったく。

=つづく=