2017年1月17日火曜日

第1538話 愛され続けて65年 (その3)

山形県・米沢市に向かう道すがら郡山で下車し、
市内随一の人気店「三松会館」にて小休止。
ポークソテーでビールを飲んだが
まだ多少の時間が残っている。
それならばと地元の日本酒がほしくなった。

酒のリストが膨大である。
日本酒・焼酎はもとより赤・白・泡のワインが他店とはケタ違い。
東京でもこんな店はめったにない。
しかも「三松会館」は気取ったところなど微塵もなく、
大衆食堂にして大衆酒場にすぎないのだ。

選んだのは地元ではないものの、同じ福島の会津娘。
清酒で娘、しかも会津が冠されているのを見ると、
アナウンサーの唐橋ユミちゃんのメガネ笑顔が脳裏をかすめるが
彼女は会津ほまれの蔵元のお嬢さん。
自身もかなりの酒豪であるらしい。

料理と違い、酒は1分以内に届いた。
ややっ! こいつは驚いた。
白ワインじゃないんだヨ
会津娘は可憐な姿で登場。
あたかも白無垢に身を包んだ花嫁御寮の如し。
会津娘はこんなふうに嫁いでゆくんだろうか。
 
写真では判りにくいがこのグラスは
紛れもないリーデル社のオー・シリーズ。
カタチが丸いオーはアルファベットのOに由来するのだろう。
 
オーストリアのリーデル社はワイングラスのトップメーカー。
創業260年を誇り、その誕生はフランス革命以前だ。
悲劇の王妃、マリー・アントワネット。
彼女がウイーンに生まれたのが1755年だから、
ほぼ同い年と推測されよう。
失礼ながらみちのく郡山でリーデルに遭遇するとはねェ。
 
肝心の会津娘は雑味やケレンとは無縁の美酒。
野球のピッチャーに例えると
球速はそれほどなくともコントロールに秀でている。
ストレートが外角低めにピシリとキマる。
これならしぶとい打者揃いの打線に連打を浴びることはない。
 
酒類の品揃え、グラスの選択、
店主の主義主張とセンスが如実に発揮されている。
昭和20年代にこんなマネができるはずもなく、
当代、あるいは先代が始めたものだろう。
 
かなうことなら腰を落ち着け、
ゆるり飲み続けたいところなれど、そうもいかない。
発車時刻に間に合った福島行きのローカル電車に乗り込んだ。
 
=おしまい=
 
「三松会館」
 福島県郡山市大町1-3-13
 024-932-0173