2017年4月4日火曜日

第1593話 慶喜公の墓のそば (その4)

徳川慶喜公の墓のそばにあるそば屋、
「慶喜(けいき)」で土曜日限定のとんかつ定食をお願い。
もちろんビールも同時に注文した。
中瓶だからものたりないけれど、1本だけにしておこう。

ビールに揚げ塩ピーナッツの小袋が添えられた。
皮付きのまま揚げたところに塩がまぶしてある。
場継ぎと時間稼ぎの一石二鳥は
国際線の機内で飲み物を頼んだときに似ている。
これ幸いにポリポリやりながら
とんかつの揚がるのを待つ。

ピーナッツのあとに小皿に盛られたお新香が到着。
きゅうりと大根の浅漬けである。
彩りを考慮してか、赤いにんじんも一片。
ヌカミソ臭くない浅漬けは好きだからうれしい。

続いてミニ冷やかけが来た。
そばは(冷)・(温)選べ、冷たいほうを選んだのだ。
お椀のそばに冷やつゆがぶっかけられている。
つゆが多くてかなりしょっぱいが、そばそのものは悪くない。

そしてメインのとんかつがキャベツの千切りを従えて登場。
かつはちょいと薄目ながら平たくのばされており、
実際の重量より見た目は大きい。
半分をビールのアテ、残り半分をメシの友とする。
それなりに良き週末のランチといった感じかな。

帰り道。
「慶喜」のはす向かいに小さな和菓子屋を見とめた。
店先に一組の母娘がたたずんでいる。
ツラれるようにこちらも立ち止まり、ショーケースをのぞいた。
みたらしと餡子の団子のほか、
桜もち・草もち・うぐいすもち、あとは栗かんてんなど。
ほかに赤飯や山菜おこわなど、ごはんものが並んでいる。

季節が季節だけに桜もちを買い求める気になった。
先客の母が店員と言葉を交わしている。
何でも文京区・茗荷谷から
台東区・谷中までわざわざやって来たという。
知る人ぞ知る佳店のようだ。

結局、J.C.が購入したのは
みたらし団子1本、桜もち1個、そして赤飯1パックである。
自分の行動に自分で驚いたが
赤飯を買うのはおそらく人生初めてかもしれない。

この日の夕食は自宅でとるつもり。
みたらしでビール、桜もちで清酒を楽しみ、
赤飯を締めとする算段だが
何でこんな買い物をしたのか自分でもよく判らない。
普段のリズムを狂わせる、それが春というものか!

=つづく=