2017年4月19日水曜日

第1604話 ブリにクジラを食べさせた (その1)

  ♪   エンコ生れの 浅草育ち
     極道風情と いわれていても
     ドスが怖くて 渡世はできぬ
     賭場が命の 男伊達
     背中(せな)で呼んでる 唐獅子牡丹

     親にもらった 大事な肌を
     墨で汚して 白刃の下で
     積もり重ねた 不孝の数を
     なんと詫びよか オフクロに
     背中で泣いてる 唐獅子牡丹

     白を黒だと 言わせることも
     どうせ畳じゃ 死ねないことも
     百も承知で やくざな稼業
     なんで今更 悔いがあろ
     ろくでなしよと 夜風が笑う

     流れ流れの 旅寝の空で
     義理に絡んだ 白刃の喧嘩(でいり)
     ばかなやつだと 嘲(わら)ってみても
     胸に刻んだ 面影を
     忘れられよか 唐獅子牡丹   ♪

        (作詞:水城一狼・佐伯清)

国民的俳優・高倉健の代表作、
唐獅子牡丹シリーズの挿入歌である。
レコードになった「唐獅子牡丹」の歌詞とは異なって
こちらはレコーディングされていない。

あくまでもBGMといった扱いなのだ。
歌詞そのものがレコード版よりずっとヤクザっぽく、
これぞ極道という感じがよく表現されていると思う。
ドスだの、墨だの、白刃だの、ろくでなしだの、
やくざ稼業のきびしさがリアルににじみ出ている。

エッ、レコードのほうも出さなきゃ、
比べようがねェじゃねェか! ってか?
ヘッ、ごもっともで。

  ♪   義理と人情を 秤にかけりゃ
     義理が重たい 男の世界
     幼なじみの 観音様にゃ
     俺の心は お見通し
     背中で 吠えてる
     唐獅子牡丹


     親の意見を 承知ですねて
     曲がりくねった 六区の風よ
     つもり重ねた 不孝のかずを
     なんと詫びよか おふくろに
     背中で泣いてる 唐獅子牡丹


     おぼろ月でも 隅田の水に
     昔ながらの 濁らぬ光
     やがて夜明けの 来るそれまでは
     意地でささえる 夢一つ
     背中で呼んでる 唐獅子牡丹  ♪


     (作詞・水城一狼・矢野亮)

こちらのほうがより文学的だ。
殊に3番なんか実にそうである。

=つづく=