浅草1丁目の「酒富士」。
相方とビールを飲みながらつまみの吟味。
アサヒのテリトリーだから銘柄はスーパードライだ。
合いの手には旬を迎えたホタルイカを選ぶ。
良質な富山湾の産である。
スーパーなどで売られている普及品は兵庫産がメインだが
富山産は一味も二味も違う。
内臓がミッシリ詰まってプックリと太り、
食感豊かにして奥深い滋味を併せ持つ。
ホタルいカは富山に限るのだ。
相方はホルモンの煮込みを注文。
煮込みは好物ながら、あちこちで食べすぎた。
よって最近はほとんど頼むことがない。
食傷気味である。
頃合いを見計らい、隣人に声を掛けた。
これまでに彼女は一言も発していないが
何となく英語圏の人種であることが感じられ、
英語で話し掛けたのだった。
「かつ丼が好きなんだネ?」
一瞬、ビックリした眼差しをこちらに向けながら
「ええ、そうなんです」
微笑とともに言葉が返ってくる。
「酒富士」は昭和の酒場でありながら
昭和の食堂も兼ねている。
食事だけの女性客のグループが
けっこう利用する店でもあるのだ。
訊けば、彼女はオーストラリアン。
観光客ではなく日本で働いているそうだ。
「どこで?」
「長野の白馬で―」
「へェ~、白馬でしてるの?」
「ホテルのレセプショニストなの」
「ほぉ~ッ、長野、ボクは長野県出身なんだヨ」
「そうですか、長野は美しいところですネ」
意想外の展開に驚きながらも
フォリナーにふるさとを美しいとほめられれば
悪い気はしない。
悪い気はしないどころかウキウキしてしまう。
気分をよくしたお調子者が次に発した言葉は
「ビール飲む? オーバー20でしょ?」
うれしいことに豪州娘はニッコリ笑ってうなずいた。
(そうこなくっちゃ!)
「すみませ~ん! ビールもう1本ネ」
「はぁ~い!」
心なしか女将サンの返事も元気いっぱいである。
=つづく=
相方とビールを飲みながらつまみの吟味。
アサヒのテリトリーだから銘柄はスーパードライだ。
合いの手には旬を迎えたホタルイカを選ぶ。
良質な富山湾の産である。
スーパーなどで売られている普及品は兵庫産がメインだが
富山産は一味も二味も違う。
内臓がミッシリ詰まってプックリと太り、
食感豊かにして奥深い滋味を併せ持つ。
ホタルいカは富山に限るのだ。
相方はホルモンの煮込みを注文。
煮込みは好物ながら、あちこちで食べすぎた。
よって最近はほとんど頼むことがない。
食傷気味である。
頃合いを見計らい、隣人に声を掛けた。
これまでに彼女は一言も発していないが
何となく英語圏の人種であることが感じられ、
英語で話し掛けたのだった。
「かつ丼が好きなんだネ?」
一瞬、ビックリした眼差しをこちらに向けながら
「ええ、そうなんです」
微笑とともに言葉が返ってくる。
「酒富士」は昭和の酒場でありながら
昭和の食堂も兼ねている。
食事だけの女性客のグループが
けっこう利用する店でもあるのだ。
訊けば、彼女はオーストラリアン。
観光客ではなく日本で働いているそうだ。
「どこで?」
「長野の白馬で―」
「へェ~、白馬でしてるの?」
「ホテルのレセプショニストなの」
「ほぉ~ッ、長野、ボクは長野県出身なんだヨ」
「そうですか、長野は美しいところですネ」
意想外の展開に驚きながらも
フォリナーにふるさとを美しいとほめられれば
悪い気はしない。
悪い気はしないどころかウキウキしてしまう。
気分をよくしたお調子者が次に発した言葉は
「ビール飲む? オーバー20でしょ?」
うれしいことに豪州娘はニッコリ笑ってうなずいた。
(そうこなくっちゃ!)
「すみませ~ん! ビールもう1本ネ」
「はぁ~い!」
心なしか女将サンの返事も元気いっぱいである。
=つづく=