2017年4月10日月曜日

第1597話 蒲田の本店 はしご酒 (その1)

  ♪   人の情けが ひとしずく
     しみて苦労を 忘れ酒
     昔恋しい下町の 夢が花咲く錦糸町
     よってらっしゃい よってらっしゃい お兄さん

     飲めば飲むほど うれしくて
     しらずしらずに はしご酒
     恋は小岩と へたなしゃれ
     酒の肴に ほすグラス
     よってらっしゃい よってらっしゃい お兄さん ♪

              (作詞:はぞのなな)

宇多田ヒカルのお母さん、前川清の元妻、
藤圭子の「はしご酒」が
東京の下町に流れたのは1975年の年の瀬。
あのハスキーボイスにまじって
「シクラメンのかほり」(布施明)、「私鉄沿線」(野口五郎)、
「時の過ぎゆくままに」(沢田研二)、「おんなの夢」(八代亜紀)、
「昭和枯れすゝき」(さくらと一郎)、「ロマンス」(岩崎宏美)、
加えて先月亡くなったムッシュかまやつの「我が良き友よ」。
そんなヒット曲が入り乱れていた。

「はしご酒」は以前にも紹介したけれど、
好きなものは何度でもおつき合い願っちゃう。
歌詞は1番と3番。
はぞのななによる味わい深い詞をお楽しみくだされ。

この曲は後年、五月みどりの妹の小松みどりによって
カバーされ、こちらは舞台を松戸・柏・取手、
はたまた川口・浦和・春日部など
千葉・茨城・埼玉と広範囲に移している。

サブタイトルにあるごとく、
今回、はしご酒に酔いしれたのは大田区・蒲田だ。
ちなみに大田区の区名は
大森と蒲田の一文字どりによる。
小学校五年生の春まで大森の圏内、
平和島で過ごしたのでこのエリアには懐かしさがつきまとう。

当時、京急・平和島の駅名は学校裏だったが
昭和36年に改称された由。
旧名のほうに愛着を覚えるけれど、
いかんせん学校裏じゃ、バス停みたいだから致し方なし。

その学校裏に棲んでいた頃、
往時から大田区きっての繁華街だった蒲田をたびたび訪れた。
まだ庶民の娯楽がTVではなく映画の時代だから
家族揃って京急電車に乗って来ていた。

=つづく=