2017年4月18日火曜日

第1603話 メロにメロメロ (その3)

そんなワケでなかなかに美味な銀ムツことメロである。
であるが、いかんせん量が多すぎる。
テンコ盛りのメロカマ煮付けを目の当たりにして
みな唖然とするばかりなり。
ただし、約一名を除いてネ。

その一名が最年少のAみであった。
ハタで見てると、もはや摂食というより格闘ですな、アレは。
そうか、食事は格闘技だったのか!
古来より弱肉強食というもんな。

とにかくAみは旨い、美味いを連発して
われを忘れてしまったかのよう。
まさしくメロにメロメロの様子であった。
いや、その若さがうらやましい。

かたや最年長のJ.C.とT子姐さんはといえば、
およそ100gほどいただいたところで
匙を、もとい、箸を投げてのギブアップ。
メロにボロボロにされていた
いや、歳はとりたくないもんだ、ジッサイ。

食べる量は年相応に減ってきたけれど、
飲む量は若い頃と変わることがない。
これってベツに肝臓が胃袋より
丈夫というわけじゃないのだろう。

とまれ、キリンラガーから黒松白鹿山田錦に移行。
300ml入りの瓶に入った冷酒である。
飲み口が軽いからスイスイとノドをすべり落ちてゆく。
けっこうなピッチで盃を重ねた。

メロの大皿が下げられたあとに運ばれたのは
刺身盛合せのこれまた大皿だ。
マグロの赤身と中とろ、白身の何か、サーモン、
それにタコとイカもあったかな?
記憶がおぼろげでよく覚えていない。

二種のマグロを小皿にとり、
白鹿と生醤油を同割りにして即席ヅケを作成する。
しばらくしてその皿を見ると、すでにもぬけのカラ。
隣りの最年少がちゃっかり完食に及んでいた。
やれやれ。

仕方なく大皿に残ったサーモンを一切れつまむ。
普段口にすることとてないサーモン刺身の味気ないこと。
あとは牛ロース焼肉を一枚、焼き餃子を一片、
それにラーメンを一すすりしただけである。

おのおのしたたかに酩酊してお開き。
東西線に乗り込む一同と握手を交わし、
こちらは独り、大江戸線へ。
車内は空いていてシートに着尻するや目を閉じる。

再び目を開けたとき、
電車は牛込神楽坂駅に停車していた。
大幅な乗り越しに酔いも醒めかける。
いや、マイッたぜ。

=おしまい=

「宝家」
 東京都江東区門前仲町1-12-5
 03-3643-4538