2017年8月4日金曜日

第1671話 開業間もない焼きとん屋 (その2)

北区・十条の「碁ゑん」の刺身は
赤系―馬刺し・ユッケ
白系―レバ・ガツ・コブクロ
黒系―センマイ・ミミ
など、3系列揃っている。
隣りの客のレバが白いのは生では出せないため、
長時間低温調理を施すためである。
一見、フォワグラのようだ。

J.C.は生肉はあまり好まない。
焼きとん屋でも焼肉屋でもまず頼むことはない。
かつてどこの焼肉屋でもレバ刺しが食べられた時代に
レバ刺しを注文しても必ずサッとあぶってから食べた。
いわゆるちょい焼きは大好きなのである。

目の前のオニイさんに生ビールの銘柄を訊ねると、
ちゅうちょしながらアサヒだという。
インド系、あるいはインド・日本のハーフ、
そんな容貌ながら日本語は達者である。

入店の際にちょっと見したが
焼き台前の家族が飲むビールには
あまり見かけないラベルが貼られていた気がする。
ここは中ジョッキをお願いした。

そうしておいて品書きを手に取り、
部位の品揃え豊富な焼きとんの取捨選択に掛かった。
あわよくば2軒目を狙いたい。
よって片っ端から制覇するわけにはいかない。

吟味に吟味を重ねてまず4本。
レバ・アミレバ・シロ・キクアブラを選んだ。
塩・タレの指定はしない。
当店ではおまかせするのが習わしらしい。

ジョッキが空く頃にシロとアミレバがタレで到着。
アミレバというのはレバの網脂巻きである。
網脂は豚の胃の周りにあるネット状の脂。
仏語でクレピーヌといい、
フランス料理にはひんぱんに使われ、
調理されたものをクレピネットと呼ぶ。

レバのクレピネットは初めての体験で
これはなかなかだったが
やはり定番のハンバーグを包んだほうが合っている。
子どもの頃、東武東上線・中板橋に棲んでいた時代。
母親がよく線路の反対側の精肉店で
ハンバーグのクレピネットを買ってきては焼いてくれた。
大好きだったなァ。
確か「川さん」という屋号だったと思うが
数年前に立ち寄った際、クレピネットは売られていなかった。

=つづく=