2017年8月16日水曜日

第1679話 思い起こすはジェルミとカラス (その2)

ブリとヒラマサの違いのつづき。
ブリは脂のノリがよいが身は柔らかい。
一方、ヒラマサは脂が少なくとも
コリッとした歯ざわりがよろしい。
同じ仲間のカンパチによく似ている。
それでもあんまり好きじゃないけどネ。

とにかく文京区・千石は旧白山通りの「シシリア食堂」。
カメリエーレがオススメ料理を何皿か挙げてくれたなら
選択の余地が広がろうというものを
一皿縛りでこられたら頼まざるを得ないじゃないの。
目の前には店主兼シェフがこちらに注目している。
この場で拒んだら角が立っちまうヨ。

長崎産なら五島列島あたりで揚がったものだろう。
素材の質に問題はないはずだ。
ほとんど仕方なくヒラマサのカルパッチョをお願い。
加えて相方が選んだバーニャ・カウーダも。

近頃の女性はイタリアンならバーニャ・カウーダ。
スパニッシュだとアヒージョ。
先日も嘆いたばかりだが悲しいことにこれが定番。
っていうかァ、ほかの料理を知らないんじゃないの。
つまらんものが流行るものだ、ったく。

ヒラマサのカルパッチョは
オリーヴオイルと乳化させたレモンソースで供された。
まずまずながらカルパッチョはやはり白身魚が望ましい。
とりわけ脂分の少ないヒラメやスズキがよい。
真鯛でも少々シツコいくらいだ。
もともと赤身の牛肉を使用するヴェネツィア発祥の料理、
サカナを使うならせめて白身であってほしい。

バーニャ・カウーダは
ピエモンテ州(この地のワインはすばらしい)の郷土料理で
直訳すれば熱いソースという意味。
だのにアンチョヴィが主張するディップが冷たい。
ならばバーニャ・フレイダとするのが正しかろう。

シチリアはイタリア国土の南のはずれ。
ピエモンテは真逆に北の端である。
言わば沖縄料理の居酒屋で
北海道産じゃがバターを注文するにひとしい。

生野菜の陣容はエンダイヴ、ラディッキオ、ルッコラに
きゅうりと人参などなど。
まっ、サラダ好きの日本女性に人気があるのもうなづける。

「この味がいいね」と君が言ったから七月六日はサラダ記念日

ってか。
ちなみに当日は七月八日でありました。
わずかにビンゴならず!

=つづく=