2017年8月1日火曜日

第1678話 ニュージャージーから来た夫婦 (その2)

ニュージャージーから一時帰国中のF田夫妻。
彼らの結婚披露宴は35年前、金沢で執り行われた。
J.C.にとっては初めて訪れる、
加賀百万石の城下町だった。

会社関係の出席者はほかに支店長のポール・バーナンド。
実はこの御仁こそが
J.C.というニックネームの名付け親なのである。
言わば、マイ・ゴドファーザーですな。
それに関してはこのブログの前身、
Qさんコラムの「食べる歓び」、
その第1回に詳述しているので
ご興味のある方はご覧くだされ。
http://www.9393.co.jp/okazawa/

さて、当日の午後、会場に赴いてみると、
ポールの姿が見えない。
Lou曰く、緊急会議のため、
前夜、急遽ロンドンに発ったとのこと。
ふ~む、そりゃ can not help だわな。
披露宴後、香林坊にでも繰り出して
一献かたむけようと思っていただけに残念ではあった。

そのことよりも驚いたのは手にした席次表である。
新郎側主賓席におのれの名前があるじゃんか!
接客係に案内されて着席すると、
目の前には自分よりかなり年長の新婦側主賓の姿。
新婦の勤務先、大手電機メーカーの直属の上司、
課長さんだったか、部長さんだったか?
いや、とにかくマイッたな。
スピーチの依頼すら受けていない身が
いきなり主賓だとヨ。

宴が始まり新郎新婦がメインテーブルに着き、
媒酌人の挨拶が始まったが
そんなもん耳に入っちゃこない。
急ぎ、文言を組立てなきゃならないからネ。

このとき役に立ったのはホテル時代の経験である。
結婚披露宴のサービスは数限りなく担当してきた。
主賓のスピーチも同じ数、拝聴しているわけで
そんなことを思い出しつつ、
あとは新郎の職業、マネーブローカーとは何ぞやを
15分ほどしゃべった記憶がある。

それにしても何の前ぶれもなく、
「だしぬけに主賓はないないだろうぜ!」
あらためてかつての新郎に物申す、
「たいめいけん」の店頭であった。

ようやく席が空き、窓際のテーブルに案内される。
行列しているあいだにおのおの料理を決めてあるから
注文は速やかであった。

=つづく=