2017年8月23日水曜日

第1684話 ブレーメンも炎天下 (その3)

つい2週前、灼熱の葛飾・柴又を訪れたが
元住吉のブレーメン通りも炎天下であった。
それでも元来、好きな季節は夏が一番だから
一般の人よりもダメージは小さい。
傘もささずに乃木坂、日傘もささずに元住である。

ブレーメン通り商店街は活気があった。
下町のさびれた商店街がうらやむほどににぎやかだ。
何せ、ロバとイヌとネコとニワトリが守護神だからネ。
そりゃ4匹打ち揃って鳴きわめいたら
金貨山分け中の悪党どもも驚いて逃げ出すわな。
 
スーパーマーケットが何軒もある。
うち1軒に涼みがてら入った。
店内を見て歩くと物価は都心よりかなり安い。
野菜売り場に虫籠が一つ置いてあり、
中には鳴いちゃいないけれど、スズムシが3匹。
ふ~ん、なかなかシャレたまねをするじゃないの。
と思ったら値札が付いていた。
 
籠の中のエサ(きゅうり)込みで399円也。
はたしてこれが安いのか高いのか判断がつかない。
何処で捕まえてきたのか知らんが
1匹133円は安いうちだろう。
 
スーパーで一憩した反動で余計に暑い。
通りから1本入って裏道を歩く。
汗を拭うためにシャツの胸ポケットを探ると、
先刻サロンのパパにもらったスルメが出てきた。
 
ずっと持ち歩いてもイカ仕方ない、
もとい、イタ仕方ない。
しゃぶりながら参るとしよう。
歩きながらのくわえタバコはひんしゅくを買うが
くわえスルメなら許されよう。
 
だけど炎天下をくわえスルメで歩いたらノドが渇くのは必定。
早くもガス欠症状が出始める。
駅の方向に戻りつつ、適当な店を物色するも
そう簡単には見つからない。
宵闇せまれば立ち寄るつもりのターゲット酒場が
チラリと視界に入った。
すかさずささやく。
「あとでネ」と―。
 
踏切を渡って駅東側へ。
踏切といっても電車は高架を走っているから
これは車庫への引き込み線。
したがって開かずの踏切となる心配はない。
今度はオズ通り商店街をズンズン進んで行った。
 
=つづく=