2018年2月6日火曜日

第1803話 うなぎで暮れて うなぎで明けた (その3)

高幡不動のうなぎ屋「羊の羽」にて新年会。
乾杯はビールだがクルマで来たメンバーはノンアルだ。
前菜は昆布佃煮、京揚げと水菜の煮びたし、
そして塩辛をあしらったクリームチーズ。
すべて可も不可もナシ。

あとはうな重かと思いきや、
どうやらコース仕立ての模様である。
真鯛とぶりの刺身が運ばれた。
続いて半身のうなぎ白焼きは蒸しを入れない関西風だ。
江戸の匂いを残す下町から遠く離れた多摩市。
日本橋・築地・浅草の名店・佳店には遠く及ばない。

今度はおでんがやって来た。
種はいろいろあったが
隣りに座った幹事のY子サンが
取り分けてくれたのは玉子・大根・がんもどき。
おやっ、これはいいネ。
うなぎよりもおでんが美味しい店とみた。
普段、おでん屋でがんもは滅多に注文しないけれど、
その旨さに目覚めた感あり。

ここでよほど日本酒の燗に切り替えようと思ったものの、
女子会に独り参加して
それも明るいうちから聞し召すのははばかられる。
涙は呑まなくとも一応、自重しておいた。

すると中には焼酎のお湯割りを所望する方が数人。
何だヨ、みなさん、けっこう飲むんじゃない。
遅ればせながら熱燗で追い掛けるとしようか―。
いや、待て、待て、夜も予定が入っているし、
昼の酒は思いのほか回るから、あとでダルくなる。
機先をそがれたせいもあり、ビールで通すことにする。

しんがりは小さなうな重というより、うな丼だ。
白焼きに使った半身の片割れである。
「さっき私は上の方だったから今度は下にするネ」―
そんな声があがる。
ほう、よく判ってらっしゃるじゃないの。
どんなサカナもそうだが
カミとシモでは味わいが微妙に異なるものだ。

J.C.のうな丼はシモだった。
うなぎも穴子もシモを好む身、ほくそ笑んでみたものの、
あれれ、ずいぶん焦げ目が目立つなァ。
いくら何でも火の入れすぎだヨ。

一口いただいてやっぱりアウト。
過ぎたるは及ばざるが如し。
焼け焦げの苦み満載の蒲焼きであった。
てなこって
今年はほろ苦い幕開けになりましたとサ。

=おしまい=

「羊の羽」
 東京都多摩市高幡150
 042-506-9982