2021年1月27日水曜日

第2577話 ハポン イ エスパーニャ

尾竹橋を渡った。

北千住へは隅田川に初めて架かった橋、

芭蕉ゆかりの千住大橋から入るのが一般的。

道筋は千住のメインストリート・日光街道だ。

尾竹橋経由はからめ手からの入城とも言える。

 

橋の北詰で通りを右に外れ、旧千住町に足を踏み入れた。

千住元町・同柳町・同寿町・同大川町などなど、

昔の町名がそのまま残るエリアである。

 

街道の東側、北千住駅周辺は開発が進み、

複数の大学も移って来て賑わいを見せるが

此方は置いてきぼり、活気がまったく感じられない。

そのぶん、たたずまいに趣きがあって

オッサン・ウォーカーの気を休めてくれる。

 

駅近の宿場町通り、さらには東口の柳原地区まで

いや、歩いた、歩いた、さして広くもない一郭ながら

くまなく徘徊したので2時間近くを費やした。

 

物色を重ねた末、飲み屋横丁の「食彩 Kikumizu」に入店。

店頭の立て看板が和食とスパニッシュのコラボを主張する。

表題をご覧になって、何のこっちゃい?

そう思われた読者も少なくないことでしょう。

このスペイン語は“日本とスペイン”を表します。

 

だけど、こういうのって二兎を追う者一兎をも得ず。

そんな失敗が常ながら、メインを避けてタパスで継げば、

深手を負わずに済むだろうと、生のドライを通した。

 

品書きのアタマに“三代目こだわり・旬魚のお造り”があった。

ウスバハギ・千葉 650円 イナダ・新潟 600円 真鯛・愛媛 700円

フトコロにやさしい値付けも好もしくウスバハギをお願いする。

 

最後にウスバを食したのは4年前のやはり1月。

湘南は二宮の「大磯大衆食堂 えびや」で

本カワハギ・金目鯛・アオリイカともども、にぎりをいただいた。

もともと種類の少ないカワハギ類。

市場に出回るのは主に、本皮はぎ・馬面はぎ・薄葉はぎの3種。

その中では薄葉がもっとも大型だ。

 

薄造りではないが、やや薄め大きめの8切れが来た。

出汁醤油&似非わさびに加え、ポン酢&紅葉おろしも―。

死期硬直が溶けかかって歯ざわりよく滋味深いものがあった。

 

何かエスパーニャをいこうと、ムール貝の漁師風を追加する。

トマト・オニオン・ニンニクの効いたスープ仕立ては

バゲットが投入され、煮られていた。

 

スペインの赤、コモ・ロコを合わせる。

品種はモナストレル(仏ではムールヴェードル)100%。

ガルナッチャ(仏ではグルナッシュ)を想起させるが

いかんせん冷た過ぎでブランデーよろしく、

両のてのひらに温めることしばし。

当然のように裕次郎の歌声が―。

 

♪   指で包んだ まるいグラスの底にも

  残り少ない 夢がゆれている   ♪

 

先日、石原プロモーションは58年の歴史に幕を閉じました。

 

「食彩 Kikumizu

 東京都足立区千住1-33-11

 03-3882-6261