2021年2月18日木曜日

第2593話 41年、ひとりきり

10分ほど歩き、練馬高野台駅に到着。

新宿線を含め、西武鉄道で一番新しい駅は1994年の開業だ。

すぐ西側を走る笹目通りの大渋滞を緩和するため、

高架駅が新設されたわけだが

新しいだけにこれといった店舗はない。

 

チェーン店ばかりが目立つ散人泣かせの町を

素通りして富士見台へ。

「大貫」の予約は17時半。

まだ30分の余裕があり、駅周辺を徘徊する。

新駅とは打って変わり、気を引く店が何軒かあった。

 

店主の笑顔に迎えられ、2卓あるテーブルの小さいほうへ。

コロ助のせいでカウンターは使われていない。

現状のキャパは10席、店主ひとりが取り仕切る。

開業から41年、ひとりきりでやってきたそうだ。

 

ビールはエビスかギネスの瓶のみ。

異なるタイプに選択肢を広げてもらいたいが

意を決して十数年ぶりのエビスに挑戦。

 

グラスを飲み干してノド越しはよかった。

それでも気になる残り香を消すため、

突き出しのもずく酢で追いかける。

 

熊本産馬刺身(1180円)とあった、馬刺しをお願い。

脂っ気のまったくない、良質の赤身は舌にやさしい。

店主曰く、近頃は脂身を注入して

霜降り加工した製品も出回っているとのこと。

なんだか気色悪いネ。

 

生の越前がにで作りました 

この一筆に惹かれ、

かにクリームコロッケ(1150円)を追加すると、

大きめの俵形が2カン付け。

もうちょいカニカニ感がほしいが旨みはじゅうぶん。

タルタルソースの玉子とピクルスが主張する。

 

ビールは1本で切り上げ、紫蘇サワーに移行。

国内産の赤紫蘇を使用して

コダマのバイスで作るサワーよりパンチがある。

 

50年以上継ぎたしてきた焼鳥のタレ、

ご賞味ください

定期的にろ過して火入れしています

再び一筆に背中を押され、

平飼い地鶏もも肉(800円)を1枚焼いてもらう。

 

ん? 創業41年で50年の継ぎたし?

客の疑問に気づいたのか、店主が説明してくれた。

独立する前の店から譲り受けた由。

地鶏は美味しく、タレにも深みを感じたものの、

いかんせん、甘みが強すぎた。

 

落胆させてはならじと、その旨伝えず、

代わりに、きのえね純米大吟醸を所望。

千葉の酒で締め、お勘定は5900円也。

馬に蟹に鶏、いろいろいただき、ごっちゃんでした。

 

「大貫」

 東京都練馬区富士見台2-18-20

 03-3998-8880