2021年2月24日水曜日

第2597話 寄ってフラれて また戻る

尾山台から西へしばらく、隣り町の九品仏に差し掛かる。

浄真寺の参道を進むもお寺は門を閉ざしていた。

冬場だからかコロ助のせいか16時半の閉門だった。

 

裕次郎の初期作品「乳母車」(‘56年)では

九品仏の駅・町・寺がたっぷりと映される。

境内の大きな石の上で裕次郎が昼寝する間に

お茶目な芦川いづみの悪戯が警察沙汰に発展するのだが・・・。

20年前、初めて浄真寺を訪れたとき、すでに大石は撤去されていた。

駅の反対側、商店街を歩くも尾山台よりずっとさびしい。

 

自由が丘に到着したが19時には酒類の販売が止まるので

物色する時間なく、街一番の酒場「金田」に直行したが

順番待ちの先客2名でなかなか席が空かない。

パーを作った右手を上げ、スタッフに向かって

「またにするネ」―ガラス戸を引いた。

「お待ちしてます」の声を背中に聞いた、

ような気もしたが空耳だったかもしれない。

 

店を出ると、はす向かいに焼き鳥「かとりや」があった。

L字カウンターに空席もある。

口八丁手八丁の女将サン、その真ん前に陣取った。

泡が治まるのを待ってグビ~ッ!

ドライのジョッキは(大)に近い(中)で飲み出あり。

串は鳥と豚の二刀流だ。

ハツ・レバ・ナンコツの3種は鳥・豚のどちらも揃う。

 

鳥ハツ&ねぎまを塩、豚レバをタレで通す。

ねぎま良からず、ハツ、レバまずまず。

ジョッキのお替わりと

豚ばらトマト巻、鳥つくね生ピーマン添えを塩で―。

うん、こんなものかなァ。

山の手の水準には達していても下町には遠く及ばない。

勘定は1980円也。

 

時刻は18時45分、ダメ元で目の前の「金田」に戻る。

先刻とは打って変わって空きスキだ。

カップル5組にJ.C.を加え、ただいま11人。

ハハハ、TBSのTVドラマが懐かしいネ。

 

着席と同時に、あとで訊いて判ったことだが

アルバイトのアンちゃんが

「さっきはスイマセンでした」

「いえ、いえ、トンデモない」

このひと言のアル・ナシが飲む酒の味わいを変える。

 

時間の制約があるため、菊正生貯蔵酒300mlをお願いし、

プリントアウトされた品書きにすばやく目を走らせる。

福井産甘鯛があってキマリ。

カブト焼きと信州蒸し(そば入り)で迷った末、

カブトを択ぶと、品書きに傍線が引かれ、売切れである。

 

かくも短き滞在に、かくも安き勘定は1970円也。

何度もオジャマしている「金田」でこんなの初めて。

これもみなコロ助のせい、いや、おかげでありましょう。

 

「かとりや 自由が丘店」

 東京都目黒区自由が丘1-12-9

 03-3718-5505

 

「金田」

 東京都目黒区自由が丘1-11-4

 03-3717-7352