2023年5月4日木曜日

第3267話 みちのく酒場で 飲む酒は (その2)

千駄木「民謡の店 おばこ」は
秋田・山形の酒肴を供する郷土居酒屋。
相方のS織が当店を指名した理由は
「J.C.みたいなお客さんと
 ご主人のやりとりを聴きながら
 お酒を飲みたかったの」なんだが
「居酒屋で聴く大人同士のハナシは面白いわ」
「会話を酒の肴にしやがって」
「ウフッ、そう言われればそうだわネ」

ホヤ塩のあとは
秋田のいぶりがっこと山形の赤かぶ漬け。
日本海沿いの漬物には格別なものがある。
酒を青森の作田に切り替えた。
スッキリとした口当たりに
ふくよかな後味が残り、美味しい酒だ。

店主オススメの鮭ハラスを通す。
「ウチのはあんまり脂っこくないんでネ」
なるほどスーパーで売ってるギトギトのハラスと違い、
身がたっぷりついた、腹身だネ、これはー。

そうして本日のメインは山菜天ぷら盛合わせ。
山形から直送された山菜たちは
ザルにてんこ盛りである。
そいつを女将がていねいに揚げてゆく。

すべて塩でやった。
こごみ・たらの芽・山うど・こしあぶら・
行者にんにく(アイヌネギ)、
まったくもって非の打ちどころナシ。
野菜の天ぷらは好きだが山菜に如くはナシ。

山菜天でお腹がくちくなってしまい、
あとは作田の盃を重ねるばかり。
箸を置いて店主とよもやま話に花を咲かせる。
この人は千駄木の花咲か爺さんだネ。
ちなみにご夫婦、女将は唄と三味線、
旦那は尺八を奏で、いわゆる”婦唱夫随”だ。

料理を出し終わった女将も会話に参加。
話題はもっぱらふるさと納税じゃなかった、
ふるさと秋田の西馬音内である。
風の盆というと、越中八尾のおわら風の盆が
全国的に有名だが近年、こちらも注目を集めている、
風の盆とはいわず、単に羽後町の盆踊りと呼ばれる。

人混みが苦手なJ.C.は祭りがあまり好きではない。
地元に近い三社祭や神田祭でさえ食指が動かない。
ただ、静かでもの哀しい八尾や西馬音内は
いつか訪れてみたいと思っている。

相方のおかげで美味い酒が飲めた。
とても良い店だった。
ご褒美として梅雨が明けたら
生ビールを飲みに連れてゆくこととなる。
手駒がまた1枚増えちゃった。

「民謡の店 おばこ」
 東京都文京区千駄木2-43-4
 03-3822-8411