2023年5月18日木曜日

第3277話 かつて明菜は のみともだった (その2)

どうして明菜が親友のマイケル宅に?
事情はこうであった。
彼の顧客に或る邦銀のマネー・ディーラー、
I上氏がいて、J.C.もよく知る人物だが
彼の奥様が明菜のスタイリストのお友だち。

明菜の渡米に当たり、適当なホームステイ先を
紹介してほしいと依頼があってお鉢が回って来た由。
なるほどそういうことかー。
その夜はそのあと「ブルー・ノート」か
「ヴィレッジ・ヴァンガード」でジャズを聴いた。

ここからあるときは通訳、そして週に一度はのみとも。
そんな関係が築かれたのだった。
明菜、J.C.とファーストネームで呼び合う仲も
異国の街で出逢ったからこそ。
もしこれが東京だったら、こうはいかなかったろう。

あちこち連れ回したが
食事は和食と同じくらいにタイ料理を好んだ。
トムヤムクンやパッタイを前にすると
やおらハンドバッグから
チリパウダーを取り出し、料理にかけまくる。
辛い物を食べてれば太らないと信じていた様子だ。、

一番歓んだのはハーレムのジャズクラブ。
日本の娘が簡単に行けるところじゃないからネ。
素晴らしいドラマーがいて
彼のソロには二人とも心底惚れ込んだ。

こんなこともあった。
マイケル家は妻と娘の三人暮らしなんだが
5歳くらいだったかな?
娘のロジーナが降ってわいたように現れた、
ライバルにヤキモチを嫉き始めた。

アメリカ人の子どもには身体の小さい日本人は
自分と変わらない年頃に見えるのだろう。
助けてくれとの要望に応えて
クイーンズの外れまで出張って行き、
どうにか宥めすかして一難去ったように見えたが
あまり効果はなかったらしい。

その後はロジーナに明菜と両親が一緒にいるところを
なるべく見せないように腐心したそうだ。
仲の悪い猫同士を別々の部屋で育てるようなもんで
どうにもニャらなく、ニャンともし難いねェ。

半年ほど経ったかなァ、明菜は東京へ帰って行き、
J.C.にも平和で穏やかな日々が戻って来た。
すると驚いたねェ。
2、3カ月もしたら台風の目がまた来襲しやんの。
いや、マイッたな。

=つづく=