2023年5月30日火曜日

第3285話 坊さんのタマゴも御用達 (その1)

この日、メトロ南北線を降りたのは目黒駅。
権之助坂を下って行った。
次回、理髪の前に立ち寄る店を物色しながらネ。
収穫はパスタ屋と菜館、このどちらかにしよう。
当日、気が変わりさえしなければ。

坂を下り切り、大鳥神社前でバスに乗る。
渋谷発大井町行きは一路、山手通りを東へ。
本日のターゲットは大崎警察署の裏手にある、
昭和の町中華「平和軒」だ。

同名の店舗は五反田TOCの脇にあるし、
祐天寺にもあったが、こちらは先頃、
閉業してしまった、
互いにゆかりがあるかどうかは判らない。

ちょいと判りにくい場所にあるが
記憶していた大崎3丁目1番地が
山手通りに面しており、
グルリめぐったら難なく見つかった。

うわっ、昭和のいい雰囲気出してるなァ。
西岸良平の世界だねェ。
引き戸を引くと、ワッワ~ワ~、ワが三つ。
さらにレトロと来たもんだ。
こうなりゃ、味なんて関係ねェ!
この空間に身を置けるだけで
シアワセいっぱい、胸いっぱい。

「すみませんがお冷やをご自分でお願いします」
「あっ、ハイ、ハイ」
歳の頃、七十代後半とお見受けする店主。
切盛りは彼一人きりの様子だ。」
言われた通りに冷たい麦茶をコップに注いだ。

「ラーメンと半チャーハンで
 ラーメンも半分にして下さい」
「かしこまりました」
物腰が柔らかい。

こういう受け答えができる人の作る料理が
不味かろうワケがない。
さっきは味なんか関係ねェなどと悪態をついたが
味は良いに越したことはない。

「ビールはないですよネ?」
「置いてないんです、すみません」
「あっ、いえ、いえ」
どうも恐縮シちゃうな。

ラーメンにはもも肉チャーシュー2枚に
シナチクとナルト。
ほのかな甘みを蓄えた懐かしの醤油スープが
身体に染み入り、実に美味しい。
割った割り箸で中太ちぢれ麺をつまみ上げた。

=つづく=