2023年10月12日木曜日

第3382話 あの頃みんな 若かった (その1)

スウェーデンから帰国して
浅草に滞在中のS水クンからメール来信。
離日が近づいたのでもう一度、
酒を酌み交わそうとの提案だ。

当然のように快諾した。
すると、ついてはゲストを一人、
呼んでほしいという。
それがJ.C.の元カノと来たもんだ。

あれは1974年夏。
日本から訪ねて来た、とM子とパリで落ち合い、
ポルトガル→スペイン→フランス→
ルクセンブルク→ドイツ→デンマーク→
ノルウェーをめぐり、
S水のいるストックホルムに落ち着いた。

ベッドルームが4つもある大きなマンションに
1週間ほど居候したのだが
そこの住人の顔ぶれがすごかった。

S水のほかにヴィッキーなる、
フィンランド娘とその彼氏の日本人青年。
ヴィッキーとはロンドンで何度か会っているので
旧知の仲だが、それに加えて
同じくフィニッシュ・ガールがあと2人。
それぞれに3歳くらいの男の子がいた。

父親はどちらも日本人で彼女たちの妊娠を知るや、
日本に逃げ帰ったのだという。
まったくヒドい話があったもので
男の、そして日本人の風上にも置けないヤツラだ。

しかし、スウェーデンは面倒見のよい国で
子どもが18歳になったとき、
スウェーデン・日本・フィンランド、
子どもに国籍を択ぶ権利を与える。
もっとも日本はノー・チャンスだろうがネ。

生活費の援助も半端じゃなく、
なんでんかんでん補助されるというので
われわれ2人の買い物のレシーも
彼女らにくれてやったりした。

J.C.&とM子は3カ月滞在してロンドンに戻った。
S水にしてみりゃ、あの頃が懐かしいんだねェ。
ぜひ逢いたいと言うんで
望みをかなえてやった次第なり。
2人が相まみえるのは45年ぶりのこと。
あの頃はみんな若かった。

さて、3人は雷門の下で待ち合わせた。
想い出すなァ、1973年11月1日。
その年、前後して日本を離れたS水とJ.C.は
パリの凱旋門の下で再会を約していた。
それが前夜、ドーバー駅のプラットフォームで
偶然にもバッタリ遭遇しちまったのだった。

=つづく=