2024年12月18日水曜日

第3691話 駒沢公園の思い出 (その2)

第二球技場のピッチをしばし眺め、
あの氷雨の日を振り返った。
あと数カ月であれから丸60年。
ずいぶん歳を取ったものよのぉ。

深沢と八雲、世田谷と目黒の区界を歩み、
駒八通りを南下して
九品仏こと浄真寺の西側を抜け、
東急大井町線・尾山台駅前にやって来た。
この沿線、というより、
世田谷区で一番好きな街だ。

緩やかな坂を上ってゆく。
これはハッピーロード。
東武東上線・大山駅前の商店街と同名だが
あちらは板橋区民、いわゆる庶民の町。
対してこちらはセレブ・タウン。
そのわりにネーミングがダサ過ぎないかい?

尾山台に来れば立ち寄る、
「オーボンヴュータン」に入店。
まずは晩酌用のフレンチ惣菜を
何点か買い求める。

ニョッキ・パリゴー(ベシャメルソース)、
ピエ・ド・コション(豚足カツレツ)、
ドフィノワ(じゃが芋のグラタン)、
フロマージュ・ド・テート(豚カシラ煮凝り)、
ソーシス・フュメ(スモーク・ソーセージ)。
帰宅後、2日に分けて完食した。

買い物が済んだら奥のカフェへ。
いつものピノー・デ・シャラントを1杯。
冷たいのがないため、ロックでお願いすると
クラッシュド・アイスで来た。

この酒は一種の酒精強化ワイン。
発酵途中にコニャックを加えて
酵母の働きを抑えることにより、
糖の分解を止めて甘みを残す。
造り手はコニャックのレイモン・ラニョー。
大好きなヴァン・ド・リキュールである。

たまには一級品のフランス菓子をと
アリ・ババ(サヴァラン)を所望したが売切れ。
菓子でも惣菜でも夕方になれば
ほとんど売切れてしまうのが当店の弱点だ。

代わりにサン・ロランを一つ。
バターと玉子を使った焼き菓子は何だかなァ、
あまり口に合わなかった。
これは店のせいじゃなくて
そんなに菓子を好まぬ自分のためだ。

ハッピーロードを駅に向かいながら思案する。
どうしよう、二子玉川へ出て田園都市線、
いや、大岡山から三田線直通かな?
どっちも似たり寄ったりで大差ないから
先に来たほうに乗るとしましょう。
サヨナラ尾山台、また来る日まで。

「オーボンヴュータン」
 東京都世田谷区等々力2-1-3
 03-3703-8428