2012年5月4日金曜日

第309話 鮪もいろいろありまして (その2)

鮨屋の看板商品の鮪であるが
高級店で使われるのは9割がたホンマグロだ。
クロマグロ、あるいはシビマグロとも呼ばれる。
確かに食味はこれが断トツで一番。
殊に熟成してほどよい酸味を備えた赤身はすばらしい。

近年はとろが好まれる傾向にあるけれど、
酒のつまみにするなら中とろで2~3切れ、
大とろは1~2切れでじゅうぶんではなかろうか。
脂ノリノリの大とろを目一杯むさぼり食う向きがいるが
あれは傍で見ていてもゲンナリしてしまう。
まっ、こういうものは好きずきですけどネ。

マグロをイノチと心得て最高級品を仕入れているのが
銀座の「きよ田」、「あら輝」といった店。
確かにすばらしいけれど、勘定書きに目ン玉が飛び出るから
そうやすやすとは行けない。

その点、比較的廉価で楽しめるのは
ホンマグロの幼魚のメジマグロ。
子どものうちは脂も少なく、あっさりしており、
これはこれでなかなかにおいしい。
おろし立てのわさびでやったら
さわやかな香気が倍加され、
江戸っ子好みのサカナといえよう。

ミナミマグロ(インドマグロ)もすでに高級魚の仲間入りだ。
値段的にはホンマグロの次にくるのがコレ。
静岡県は清水港の人気店、
「末廣鮨」はこのマグロにこだわり、
さまざまな部位を取り揃えている。

春と秋はバチマグロもじゅうぶんにおいしい。
特に5、10月はホンマグロに匹敵しうるほどで
五島列島で揚がったものは
五島シビと呼ばれるのだそうだ。
池波正太郎がひいきにした浅草「鎌寿司」には
いつもバチの背とろが用意されており、
なるほどこれは下手なホンマグロのはるか上をゆく。

先日、北千住のスーパーでキハダマグロを1サク買い求めた。
刺身におろしたら2人前はあろうかと思われるサイズで
何とこれが600円しなかった。
6、7月のキハダは旨いと言うけれど、
どうしてどうして4月のキハダもイケていた。
メジマグロみたいにあっさりしており、
半分ヅケにして酢めしと合わせ、ヅケ丼としゃれ込んだらば、
これまた花丸ジルシと相成って大満足。
キハダを馬鹿にしちゃいけないよと、再認識した次第である。

さて、どん尻に控えしはビンチョウマグロである。
いやはや、これだけは箸にも棒にもかからず、いかんともし難い。
安いのだけが取り柄のビンチョウはほとんど缶詰に加工される。
値段に惹かれて買ってしまった場合は
出汁醤油にでもじっくり漬け込んで
山芋と一緒に山かけにするしか使い道がないのではあるまいか。