2012年5月10日木曜日

第313話 アルツの予兆かもしれぬ (その2)

JR中野駅北口のアーケード、
中野サンモールの「大門」で食券を購入したところ。
これから食べる塩そばは650円。
投入した金額が1150円。
さすればおつりは500円。
数学ではなく、算数の世界である。

ところが出て来たおつりは100円玉が4枚。
どう考えてもおかしいじゃないの。
もう1回、おつりレバーを引いてみたが音沙汰ない。
ふと気がついたらすぐそばに接客係の娘が立ってる。
かがんだ腰を伸ばして見やると目が合った。
笑みこそもらしているものの彼女、
(このオジさん、いったい何してんだろ?)―
心のうちでそう思っているに違いない。
足りない1枚の100円玉に固執するのもみっともないし、
そのまま微笑み返して食券を手渡した。
相変わらず太っ腹なJ.C.である。
アホかっ! ってか? ほっとけや!

思えばあゝ、つり銭ジャラジャラの時点で
気づくべきだったのだ。
何が? ってか? まあ、先をお読みくだされ。

招かれたカウンターに落ち着くと彼女訊ねて
「大盛りと普通盛りを選べますが?」―瞳がワリと愛らしい。
「普通で・・・」―内心、つけ麺じゃあるまいしと思っている。

一呼吸おいて中野駅のキオスクで買ったサンスポを拡げた。
スポーツ新聞を買うのは数ヶ月ぶりではないかな。
1面の亀井のホームランは判るとしても6面までずっと野球だ。
日本の国民的スポーツはいまだに野球なんだろうか。
7面がシンクロ・ホッケー・陸上のロンドン五輪関連。
8面にやっとこさサッカーが来て風間フロンターレの初白星。
9面もレアルのリーガ・エスパニョーラ制覇を報じている。
ふ~ん、そういう扱いなんだねェ。

そこへくだんの彼女が再登場。
運ばれたる物体を一目見てほとんど跳び上がったネ。
何と彼女が手にしていたのは忌まわしきつけ麺でないのっ!
「エエッ、つけ麺なの?」
「はい、塩つけそばですが・・・ダイジョブでしょうか?」
強烈な肩透かしにあわれJチャン、
もんどり打って黒房下に転落の巻である。

ダイジョブじゃないけどダイジョブと苦笑しながら
振り向いて券売機に目をこらす。
あららァ~、押したボタンにゃ塩つけそばって明記されてるヨ。
塩つけそばは金750円也だヨ。
好き嫌いはあまりないのにつけ麺は苦手なんヨ。
結局、麺は半分で切上げ、つけ汁も中の具もかなり残ってしまった。
こんな失敗はまず犯さないのにねェ。
まさかアルツハイマーの兆候じゃないだろなァ。

教訓。
どんなささやかな疑問も感じた時点でクリアすべし。
あとで判ったが「大門」は大手外食チェーンの出店だった。
そうかい、そんならよかったヨ。
何がよかったんか判らんけんど、そんな心境になりましたとサ。

「大門」
 東京都中野区中野5-64-8
 03-5318-3471