2012年5月31日木曜日

第328話 職務質問されちゃいました! (その6)

衆目に晒されて二人の警察官に職質を受けるJ.C.。
不審者あつかいしたんだね? と訊いたら
老ポリ応えて曰く、
「いや、いや、いや・・・この近くの方ですか?」―
フン、方向転換かいな、老練な手管を使いよる。

「職務質問されるいわれはないけど
 上野公園に行く途中です」
「ああ、そうですか、そうか、そうか、
  いや、けっこうです、けっこうです」
バカを言っちゃあいけないぜ、
「ちっともけっこうじゃないでしょうに」
「あっ、いや、いや、どうも、どうも」―
そう言いながら人の肩をポンポンと二度たたきやがった。
まいったネ、どうも。

まあ、これ以上絡んでも仕方ないし、
ましてや背中に桜吹雪も唐獅子牡丹も
背負っちゃあいない素っ裸、もとい、素っ気質(かたぎ)。
あえて警察手帳の提示は求めなかった。
散り際、二人に軽く会釈されたので
こちらも軽く敬礼を返し、うやむやのうちに一件落着。

しっかし、ショックだな。
いえ、職質云々よりも自分はそんなに悪相なのかネ?
このことであった。
もしも若い時分から俳優やってたとしたら
おそらく悪役が先に回ってきただろうな、
という自覚が確かにあるっちゃあ、あるけれど・・・。

それでもやはり釈然としない。
ようし今度はもっと怪しい恰好で不審な行動して
ヒマを持て余す警官たちをハメてやろう。
ヘヘッ、こうなると一種のオトリ捜査だネ。
いったいどっちが警官なんだか!
まあいいや、今しばらくは泳がせておくとするか・・・。
おや、おや、今度は刑事(デカ)にでもなった気分だヨ。

冷静に考えてみると、
歩いた場所が悪かったことに気づいた。
言問通りから坂を上ってくる歩行者は十中八九、
鶯谷駅に消えるか、くだんの「公望荘」に入店するハズ。
そこをさらに直進しても、上野公園まではずいぶんあるし、
あとは忍岡中学・上野高校・東京芸術大学の学校群、
それにおびただしい数のお寺があるばかり。
ハナから墓参りにゃ見えんだろうから
変質者か誘拐犯にでも見えたんかいな、やれやれ。

その日は月曜日で上野動物園は休園。
不忍池のほとりで被疑者はのんきにビールを飲んだ。
遠くの鵜の島では鵜やペリカンや白鳥が羽を休めている。
暮れなずむ夕空の下、水景はどこまでものどかだ。
ここでJ.C.ふと思った。
水鳥たちよ、おまえたちはいいねェ、
何たって職質受ける心配がないもんなァ。

このシリーズ、長きに渡ってのご愛読に感謝します。
大した結末じゃなくって、ごめんね、ゴメンネ。

=おしまい=