2014年4月3日木曜日

第808話 初めて食べたアルバニア

読者の方々はヨーロッパの小国・アルバニアをご存じだろうか?
J.C.の記憶が確かなら、この国は長いこと鎖国政策を続け、
毛沢東思想を取り入れた共産主義に染まっていたハズ。
とにかく欧州の最貧国だから
一昔前はそれこそクルマなんかほとんど走っておらず、
乗り物といえば自転車がせいぜいだった。

ロケーションはセルビアとギリシャの間。
バルカン半島の南西に位置し、
アドリア海の向こう岸はイタリアだ。
よって多くの難民が流出して海を渡り、
南イタリアの港町、バーリやブリンディシに漂着している。

J.C.が初めて欧州周遊の旅に出た1971年。
貧乏旅行につき、短い滞在の街はユースホステル、
ローマやパリなど少し長い逗留となると、安いホテルをよく利用した。
そのとき出会った英・米・豪の若者たちがバイブルのごとく、
肌身離さず携帯していたのは往時のベストセラー、
「10 dollars a day in Europe」(ヨーロッパ1日10ドル)だった。

ホステルの食堂での団欒中、
本を拝借して流し読みしていたら
突如としてアルバニアの項目が現れた。
いや、びっくりしたねェ、その紹介文を読んで―。
他の国々には何ページも費やされているのに
アルバニアは1ページどころか、たったの1行。

 Forget it !

要するにハナから旅行はあきらめろ! と諭しているのだ。

以来、この国のことはほとんど忘却の彼方であった。
それが或る日突然、
具体的なカタチを伴って眼前に飛び込んできたのである。

鎌倉在住ののみとも・P子と久々に飲んだ際、
「珍しいモノが手に入ったから持って来たヨ」―
そう言って手渡してくれたのが
何とアルバニア産のアンチョヴィであった。

酔っ払って帰ってさっそく瓶を開け、ビールの友としたが
コイツがすばらしいのなんのっ!
産地として名の通ったイタリアやスペインやポルトガルの上をいった。

その夜は半ベロだったために写真を撮るのを忘れ、
後日、思い出してカメラに収めたのがコレだ。
瓶のデザインもけして田舎臭くない
アルバニア産のフードを食べたのは初めて。
アンチョヴィ1瓶で大それたことは言えぬが
この国は隠れた美食の都かもしれない。
その思い断ち切れぬ今日この頃である。