2014年4月24日木曜日

第823話 さらば”黒の集団”よ!

その日の正午近く、都営地下鉄・三田線の車内にいた。
芝の御成門に向かう途中、日比谷駅で
この春入社したと思しき新入社員のグループが
男女合わせて10人ほど乗り込んできた。
にわかに活気づく・・・というより、騒がしくなった車内である。
もっとも夜の酔漢オヤジ組より、なんぼかマシだ。

 騒音も  中くらいなり 昼メトロ

彼らの姿をぼんやり眺めていて違和感を覚えた。
ひとことで表せば、”黒の集団”だ。
「黒い画集」・「黒の福音」・「黒皮の手帖」を著した、
清張センセイの推理小説のタイトルにもなりそうだ。

それにしても目の前の新入社員諸君、揃いも揃って黒づくめ。
なんだか、ひと昔前の中華人民共和国における
国家公務員を想起させるものがあった。

今は昔、かれこれ半世紀も以前になるが
日本のサラリーマンのスーツを揶揄して
ドブネズミ色などといわれた時代があった。
ちょうど、一般的な日本人の住宅が
ウサギ小屋とさげすまれた頃だ。

住まいはともかくも、まだあの当時のほうが
服装、殊に色や柄は選択肢がずいぶん広かった。
ひるがえって現在はほとんど黒一色に等しい。
それも男女を問わずに―。

往時の学生ですら、
男子の学生服が黒なら、女子のセーラー服は濃紺と、
最低でも二色刷りだった。
それが今はどうだろう、
こぞってリクルート・スーツに身を包んでは安堵しきっている。
ファッション・センスもへったくれも、あったものではない。

量販店で買い込んだスーツにシャツにタイ。
明らかにこの国のファッションは退化している。
周りとおんなじ恰好をしていないと不安なんだネ。
アパレル産業の罪もあろうが
本当につまらない国に成りはててしまった。

ファッション界をリードする俳優たちをみても
個性的なセンスの持ち主はほとんどいない。
そんな中にあってここ数十年、
おのれのファッションを貫いている大物が二人いる。
かたや田村正和、こなたビートたけしだ。
高倉の健サンがそれに続くかな?

それぞれのスタイルはことなっていても
そのときそのときの流行になんぞ目もくれやしない。
スターには常にそうあってほしい。

若いサラリーマンは黒一色に染まらずに
ぜひ、濃紺や濃い茶のスーツを召してもらいたい。
そして伝統的な柄も復刻させてほしい。
ヘリンボーン(杉綾)やハウンド・ツース(千鳥格子)は
実にオシャレな柄なんだがねェ。