2014年4月14日月曜日

第815話 灯ともし頃のうな串 (その4)

焼きとんの「カッパ」で軽く飲ったあと、
まだ時間があったので立ち寄った「川二郎」。
灯ともし頃の中野の街に
止まり木をもとめる夕雀がは羽ばたき始めた。
雀といっても♂ばかり、♀の姿はきわめて少ない。
♂にしたって若者より、中年や初老の域に達した人々が目立つ。

「川二郎」のビールもキリンラガーだった。
中野はキリン王国なのかいな、よって小瓶にとどめておく。
見上げた壁に
串巻きや肝焼きが350円と記された品札が貼られている。

おや?  どうやら単品でも食べられるようになったみたいだ。
そこでさっそくレバーと短冊をお願いすると、
目の前のオヤジさん(代を継いだ店主らしい)がとまどい気味に応えた。
「あのゥ、最初の注文はセットになってるんですが・・・」―
おい、おい、それじゃ品札の意味がないだろうに。
いや、待てヨ、貼ってあるのは追加オーダー用ということか。

「セットは何本ですか?」―確かめると
「5本なんですが・・・」―くだんのオヤジが即答する。
ふ~ん、11年前から1本減っている。
当然、こっちのほうがちょい飲み客にはありがたい。
できるものならば、3本にしてほしいな。
まっ、いいか・・・、そのセットをお願いした。
いや、そうするよりほかに手立てがないのだ。

1本減は客への歩み寄りとして評価すべきかもしれない。
だがネ、ここで再びふと思った。
待てヨ、ハハァ~ン、これは歩み寄りではないな。
おそらく昨今のうなぎ価格暴騰により、
数を減らして値段据え置きのやむなきに至ったのだろう。

突き出しは相も変わらず、しその実入りのキャベツ浅漬け。
十数年来、同じものを作っているんだ。
まっ、あえて代えることもなかろう。
脂っこいうなぎにはちょうどよい合いの手だからネ。

とはいうものの、ここは一工夫ほしい。
しその実に代えて実山椒の塩漬けを散らしたら
店の品格が格段に上がること請け合いながら
そこまでのセンスを持ち合わせた店ではない。

キャベツをつまみにビールを飲みながら
おまかせ5本センットの焼き上がりを待つ。
待ちながら思った。
何の因果で豚と鰻をハシゴしているんだろう?
どっちか一つに絞れば、それで済むものを―。

=つづく=