2014年9月4日木曜日

第918話 こち亀タウンに出没 (その4)

でもって、ほとんど衝動買いしたカツサンドだったが
たちまち後悔の念にとらわれる。
夜には宴会が控えているというのにこれから半日、
こんなモンをぶら下げてるのは煩わしいことこのうえない。
第一、酔いにまかせてハシゴでもしようものなら
どこぞに忘れてくるのがオチだろう。
かといって、今この場で食っちゃうわけにもいかないし・・・
はて、どうしたものかのぅ。

このとき脳裏をかすめたのが牧村三枝子のこの曲。

 ♪ 水にただよう 浮草に 
   おなじさだめと 指をさす 
   言葉少なに 目をうるませて 
   俺をみつめて うなづくおまえ 
   きめた きめた 
   おまえとみちづれに   ♪
     (作詞:水木かおる)

サンドイッチとの道連れを決意した瞬間でありました。

結局、その夜は町屋の居酒屋にて一次会のあと、
一同、地下鉄・千代田線とJR山手線を乗り継いで鶯谷に流れた。
鶯谷は東京を代表するラブホテル・パラダイスである。

詳しいことは存ぜぬが
カップルでチェックインする客のほかに
単独のオトコが乗り込んで
春を売る女性を呼び込むシステムが構築されているという。

そんな鶯谷ながら、かつて「恋の山手線」で
裕次郎に準ずる日活スターの小林旭がこう歌った。

 ♪ 上野オフィスの かわいい娘 
   声は鴬谷わたり 
   日暮里笑った あのえくぼ 
   田端ないなア 好きだなア 
   駒込したことア ぬきにして 
   グッと巣鴨がイカすなア  ♪
      (作詞:小島貞二)

秀でた作詞と言えなくもない。

ここでもしも二次会メンバーの中に
ラブホでの憩い(あるいは激しい)の時間を強要、
もとい、共用、再びもとい、共有できる美形がいたらば、
その夜の展開はコペルニクス的転回を見せたやも知れぬ。

あにはからにんや、一夜のアバンチュール能わず、
コップ酒を2杯ほどたしなんで解散と相成った。
人生、TVドラマのように
ドラマチックには運ばんものよのぅ。
やれやれ。

=つづく=