2014年9月8日月曜日

第920話 こち亀タウンに出没 (その6)

いやあ、NYの夏は熱いなァ。
Kの夏はもっと熱い。
いえ、いえ、地球全国津々浦々、
観ている日本人の夏はさらにもっと熱い。

マドリード・オープンであのナダルを
あと一歩まで追い詰めたとき(故障がなきゃ間違いなく優勝)、
クレーコートでは世界ナンバーワンを確信した。
四大大会を制覇するなら全仏が最も近く、
逆に遠いのは芝のウインブルドン(全英)のハズだった。
どころがハードコートの全米で決勝に駆け上がってくるとは―。

決勝にはチリッチではなく、フェデラーに来てほしかった。
フェデラーが相手なら、6・4、いや7・3で錦織有利だったと思う。
過去の対戦成績はフェデラーより分のよいチリッチながら
上り調子の勢いが何とも不気味だ。

それにつけても心強いのはスタジアムの観客で
ジョコヴィッチ戦は9割方がK派であった。
ジョコにしてみりゃ、完全アウェー状態だ。
何でこんなに応援の歓声が違うの?
そんな気持ちを引きずりながらプレイしていたハズだ。
決勝も準決同様にサポーターのあと押しがあれば、
Kは栄光により近づく。

テニスのネタは決勝戦後にあらためるとして
こち亀タウンの続きとまいりましょう。

再訪はおよそ1週間後のことだった。
到着したとき、時刻はすでに22時を回っており、
この時間まで営業している店舗は限られる。
とにかくダメ元で目星を付けた2軒を訪ねるつもりではあった。

1軒目は「まづいや」。
案の定、店は夜の闇の中に沈んでいた。
ここはおでんとお好み焼きの二本立てをウリとしている。
お好み焼きはともかくも、おでんは嫌いじゃない。
おでんにピッタリなのは燗酒だろうが
ビールでつまむ真夏のおでんもまた一興だ。
そんな楽しみも暖簾をしまわれてはいかんともしがたい。

あまり期待せず近くの「遊膳」へ回ってみる。
するとオヨヨ、店先に灯りが点ってるじゃないか―。
ガラスのドア越しに奥をうかがうと、
カウンターに男性客の姿が見える。

しかしここで安心はできない。
入店と同時に
「あい、すみません、もうお仕舞いなんですヨ」―
今までそんな体験を何度も重ねてきたからネ。
幸運を念じてドアに手を掛けた。

=つづく=