2014年9月25日木曜日

第933話 そば屋で昼酒 (その2)

不忍池北畔の日本そば舗、
「新ふじ」に独りたたずむ昼下がり。
もつ煮込みをつまみにビールを飲んだところだ。
以前、「食」にまつわる月刊誌で
煮込みの連載を担当していた立場上、
23区内の煮込みはイヤというほど食べ歩いた。

東京の煮込みには2本の本流がある。
味噌仕立ての豚モツと、醤油仕立ての牛スジだ。
都内に相当数の店舗が散らばる、
「加賀屋」グループは前者の代表格。
ホッピーストリートを中心として浅草界隈は後者が主流となる。

J.C.が好むのは豚モツの味噌仕立てだ。
幸い、「新ふじ」の煮込みはわが嗜好にピタリと寄り添う。
もしもこの店にもつ煮込みなかりせば、
たびたび訪れることはないだろう。

その昼下がりも当たり前のように煮込みを注文した。
半分ほど食べ進んだところでビールの大瓶がカラになる。
移行したのは清酒・菊正宗だ。

当店の日本酒の銘柄は三択。
一合瓶が大関と菊正宗。
300ml入りの冷酒は大関だ。
煮込みの残り半分で菊正を味わった。
それから大関切り替えてお願いしたのはもりそばだ。

このために生わさびと鮫皮のおろし板を持参した。
周囲のお客に目立たぬように
ゆるり、そろりとわさびをすりおろし、
酒の肴にしながらも
時おりそばにまぶしてはつゆにくぐらせる。

いや、たまりませぬな・・・。
昭和30年代にありがちだった下世話な甘みを残したつゆ。
ひ弱にささやかにコシを残したそば。
仲を取り持つ香り高いわさび。
素朴な美味しさに日本人であることのシアワセを実感した。

「新ふじ」
 東京都台東区池之端2-8-4
 03-3821-3913