2014年9月24日水曜日

第932話 そば屋で昼酒 (その1)

代々木公園に端を発したデング熱ウイルスが
順に新宿御苑、外濠公園と東北東に進路を取り、
とうとう、わが散策の庭、上野公園にまで伝播してきた。
うっとうしいことよのぉ!

でも、あんまり心配してないんだもんネ。
何となれば、コンサートホールからミュージアム界隈、
動物園の園内、上野のお山から山下、不忍池のほとりと
それこそ上野恩賜公園の隅から隅まで
ずず、ずいっと徘徊しているが
蚊に食われたことなど一度もないからだ。

 したがって細菌、もとい、最近も平気の平左、
上野では涼しい顔して緑の中を闊歩する、
J.C.オカザワの姿を見ることができる。

8月の末のある日、朝までTVを観てしまい、
目覚めたときにはお天道さまが天高々と昇りつめていた。
倦怠感と空腹感を同時に受けとめながらシャワーを浴び、
昼めしを食べるために自宅を出た。

第一感はせいろ、いわゆるもりそばだ。
やって来たのは不忍池の北畔、
上野動物園・池ノ端門から至近の「新ふじ」である。
当ブログでも紹介済みの店は
一見、何の変哲もない町場のおそば屋さん。
しかし、それなりの歴史はちゃあんと刻んできている。
そんな日本そばの老舗だのに気取ったところがまったくない。
つかず離れずの接客ぶりにも好感が持てる。

当日のスケジュールは一日中ガラ空き。
せっかく気に入りのそば屋の暖簾をくぐったことだし、
ここで一杯やらぬ手はあるまい。
かの池波正太郎翁も断言している。
「そば屋に入って飲まぬくらいなら、そば屋には入らぬ」―
そうでしょう、そうでしょう、
それが東京人のそば屋の使い方というものでありましょう。

明るいうちどころか、
正午ちょうどの真っ昼間から飲もうと心に決めた。
この日は終日、酒池に溺れちまおうと決心したのだ。
われながら見上げた男意気と言わずばなるまい。

例によってスーパードライの大瓶で、よ~いドン!
小皿の柿ピーをつまみながら注文したのはもつ煮込み。
ここの煮込みはとてつもなく旨い。
下地は赤味噌と八丁味噌のブレンドだろうか?
とにかくめっぽう旨い。
日本そば屋にあるまじき快挙といえよう。

七色を振りかけ、豚の小腸の滋味を深々と味わう。
大瓶はすぐカラになり、菊正宗の1合瓶に切り替えた。

=つづく=