2014年12月30日火曜日

第1001話 北の横丁をさすらう (その9)

白身の昆布〆の旨い鮨屋であった。
好みにピタリと合う店はどちらも台東区・浅草にある。
馬道の「弁天山美家古寿司」と観音裏の「栄寿司」がソレ。
この2軒を都の双璧としたい。

さて、仙台、センダイ。
そうだ、壱弐参(いろは)横丁のスナップを載せ忘れていた。
”ふれあい商店街”の灯りが点る
生ビールを瓶ビールに切り替え、真子鰈の昆布〆をじっくりと味わう。
ここに生わさびがあったらどれだけシアワセだろうと思いつつも
ぜいたくは言えない、一人前が500円ポッキリのワンコインだもの。

切盛りは老夫婦二人だけ。
一見、亭主関白に見えるがトンデモなかった。
おとなしそうな女将は客のご馳走で生ビールは飲むわ、
煙草を一服つけるわ、まことに自由闊達、いや、マイッタな。

珍しい岩魚の骨酒はサカナのサイズ次第で2合が1500円より。
骨酒は小上がりのグループに人気。
連中、ずいぶんお替わりしていたな。
使用されるのは地元の鳳陽なる酒だ。

客は常連ばかりでフリの飛び込みはJ.C.のみだが居心地は悪くない。
ふらりと訪れる旅人に迷うことなく推奨できる。
会計は2200円だったから、逆算すると突き出し2品は700円程度か。
いや、実に佳い店を見つけたものだ。

いまだ北国の夜は宵の口、はて、どこに回ろう。
まさしくこの瞬間が楽しく、ウキウキと心も弾むのだ。
男に生まれてよかった、酒呑みに育ってよかった。
縁薄い知人に酒を一滴も飲めないくせに
ミシュランの三ツ星を食べ漁る目出度い御仁がいるが
不シアワセなことだヨ、ジッサイ。
もっとも本人は己の不幸にこれっぽっちも気づいちゃいないがネ。

 酒も煙草も女もやらず 百まで生きた馬鹿がいた

江戸の粋人、みごとなり!

2軒目は近場で間に合わせた。
すぐ隣りの文化横丁に吸い寄せられてしまったのだ。
一昨夜、来たばかりなのに再訪する。
くぐった暖簾はまたもや餃子元祖の「八仙」。
そう、確か2、3話前に打ち明けました。
この店にはまた来ることになろうって―。

前回と同じカウンターに着くひまもあらばこそ、
「あら、オニイさん、おとついもいらしたでしょ?」―
ちゃあんと覚えていてくれたんだ。
しかもオニイさんときたもんだ。
こちらはホロ酔いも手伝ってご機嫌もいいところ。
あとで判ったことだが店のオバちゃんたちは
かなりの年配者までオニイさんって呼んでたとサ。
やれやれ。

=つづく=

「居酒屋 金八」
 宮城県仙台市一番町2-3-30
 022-266-5626