2014年12月18日木曜日

第993回 北の横丁をさすらう (その1)

みちのく仙台へひとり旅。
のみとも・めしとも計3人と個別に旧交を温めるための遠征だ。
とまれ、夕暮れの仙台駅に到着した。
当夜はたまたま独り、まったくのフリーであった。

バタバタと家を出てきたので
行く店を絞ってきたわけじゃない。
足の向くまま気の向くままに夜の街をさまよう腹積もり。
これがまたとてつもなく楽しい。
店の構えを見ただけである程度は
その内実まで推し量ることができる。
長い人生、それなりの修業と経験を培ってきた。

駅周辺に心惹かれる店は少ない。
最終的には仙台の二大横丁、
壱弐参(いろは)横丁と文化横丁あたりにシケ込むことになろう。

とりあえず、駅からつながるアーケードをテクテクと
仙台一の繁華街・国分町を目指す。
青年は荒野をめざすが、老年は酒池をめざすのだ。

振り返れば十数年前、当時のGFと杜の都を訪ねた際、
ストリップ劇場に入ったことがあった。
勇猛果敢な女であったネ。
普通は女の身でストリップなんぞビビッてしかるべき。
ところがぜひ観てみたいという要望をかなえての入場だった。
案の定、劇場内に女性客は皆無。
われわれの席そばの客どもは
ステージの肉体とツレの面貌を半々にうかがっていたしましたとサ。
まったくイヤになっちまった。

その劇場は今も健在。
都内や近郊のストリップ劇場が壊滅状態のご時世に
これはきわめて稀有なことだろう。
いや、ご同慶のいたりというほかはない。
われ思うに、キャバクラなんかよりよっぽど文化的だがネ。

劇場近くの角地に「くろ田」なる店を認めた。
庶民的な焼き鳥屋といった風情である。
ちょいとばかりひなびており、いかにもJ.C.好み。
国分町にはほかにかような店はないからダメ元で敷居をまたぐ。
いや、この佇まいならば、
ハズしても大怪我にはつがらない自覚はもちろんあっての決断だ。

カウンター数席のみの店内はほぼ満席。
勝手が判らないから壁の貼り紙を注視する。
”セットなってます。やきとり五本、煮込み、飲み物一ツ、一人様”
肝心の値段が未記載につき、
見当もつかないけれど、雰囲気からして怖るるに足らんだろう。
とにかくこのセットを頼まずば、先には進めぬシステムのようだ。

=つづく=