2016年9月9日金曜日

第1444話 鯨にギヴアップ (その4)

大田区・大森の「富士川」にいる。
ハナシはちょいとそれるが
区名の由来は区内を代表する盛り場、
大森と蒲田の合体である。
JR中央線の国分寺と立川の間にある駅が
国立と名乗っているのと同じスタイル。
この国立、東京の住人なら”くにたち”と読むが
北海道や九州の人にはどうみたって”こくりつ”だろう。

高級住宅街として有名な田園調布には
どことなく世田谷区のイメージがつきまとう。
ところが実は大田区の端っこに位置しているのだ。

蒲田と田園調布が同区内にあるわけで
言っては蒲田の住人に失礼ながら
悪魔と天使が同居する構図である。
もっともJ.C.は蒲田のほうが好きですけどネ。

ハナシが脇にそれた、本筋に戻そう。
「大衆酒場 富士川」の品書きに鯨を見つけた。
その品揃えが驚くほどに多彩。

刺身・立田揚げ・しょうが焼き・かつ・ステーキ・
ベーコンとあって一律580円のサービス価格だ。
何か1品いっとこうか―。
ちょうどこのと、き脳裏を横切ったのが鯨の思い出だった。

今を去ること半世紀前。
大田区立大森大五小学校に通っていた。
入学したときにはすでに学校給食が始まっており、
富める子も貧しい子も昼めしだけは確保できていた。

献立のなかで思い出せるのは3品。
ねぎま汁、竹輪の磯辺揚げ、鯨の立田揚げだ。
ねぎまは砂糖をまぶした揚げコッペパンとともに
月曜日に供されることが多かった。
竹輪と鯨は隔週金曜にローテーションでやって来た。
今週が竹輪なら来週は鯨というように―。

あの頃の日本人はみな貧しく、
殊に食生活は今と比べものにならないくらい。
給食のない土・日は
栄養価の低い食物しか口にできなかった子もいたハズ。
そのあたりを補うためか、週末をはさむ金曜・月曜に
カロリーの高い揚げものを投入したんじゃなかろうか。

いや、厚生省だか文部省だか存ぜぬが
往時の省庁がそこまで深く考えたかなァ?
疑問符が付くのも仕方あるまい。

それにしても遠き日の給食の定番、
脱脂粉乳とマーガリンはおっそろしく不味かったぜ。

=つづく=