2016年9月19日月曜日

第1450話 俺らはバカか? (その4)

千葉県・松戸市の馬橋駅は流山線の起点ともなっている。
2両編成の単線で路線距離は全長5.7kmにすぎない。
以前は流山電鉄流山線を名乗っていたが
数年前、流鉄流山線に改称している。

そう言えばはるか昔、常磐線のプラットフォームから
停車している流山線の車輛を眺めたことがあった。
時代遅れのロケットみたいで
「何じゃ、あれはっ?」―ってな感じ。
現在、あの手の車輛は廃車となった模様。

流山線を利用したことはただの一度もない。
せっかくだから乗ってみようか―。
気まぐれ心に突き動かされたカタチ。
われながら酔狂なヤツよのぉ。

到着したのは終点の流山駅。
もともとこの地の名産品である醤油や味醂を
運搬する目的で大正時代に敷かれた鉄道なのだ。

しっかし、何にもないとこだこと。
20年ほど前だったか、松本清張原作の松竹映画、
「砂の器」に出てきたJR木次線・亀嵩駅を訪れたことがある。
映画とほとんど変わらぬ様子に満足し、しばしたたずんだ。
山陰の山奥にあるその駅と流山は大して変わらぬ印象だ。

進路を東にとり、江戸川を目指した。
途中、新撰組の近藤勇が敷いた陣屋跡を通りすがる。
官軍に包囲された近藤はこの地で偽名を名乗って自首し、
板橋宿に連行され、結局は見破られてしまう。
ただちに板橋で斬首、その後どうやって首を運んだものか、
京都の三条ヶ原で梟首となった。

江戸川の土手にやって来た。
午後の陽射しが強烈だ。
蒸し暑い日も川風のおかげでいくぶんマシになった。
川風をたもとに入れたいところなれど、
Tシャツじゃそうもいかない。

駅に戻るのもなんだし、
意を決して松戸まで歩いて南下することにした。
まあ、ザッと2時間はかかるだろう。
それにしても直射日光がモロ燦々である。

歩き始めてすぐに後悔。
すれ違う人とてなく、
ときおりチャリンコに追い抜かれる。
流れる川の景色がなけりゃ音を上げるとこだわい。

彼方にホテル・ニューオータニを模したビルが見える。
それが松戸の目印なのだが、ずいぶん遠いや。
この炎天下に独りテクテクと―。
まったくもって、俺らはバカか?

=つづく=