2016年9月28日水曜日

第1457話 こち亀タウンの北口にて (その3)

亀有のそば屋にいた。
時刻は13時前だったろうか―。
隣客のつまむカツオの刺身が気になりながら
残り少ないビールを飲んでいた。

すると、今度は右隣りに
小さな女の子を連れた親子三人が着席。
品書きをじゅうぶんに吟味したうえで
天ざると冷や麦の大盛りを注文した。
仲睦まじい夫婦の穏やかな会話が続く。
ダンボでなくとも自然に耳に入ってくる。

小分けにされた冷や麦をすする娘がおとなしくてとても良い子。
利発なのだろう、無駄口をいっさいたたかない。
飲食店だろうが電車の車輛だろうが
ピーピーギャギャー騒ぎまくる馬鹿っ子が跡を絶たない昨今、
いや、これはほとんど親がアホなんやけどな、
こういう落ち着いた子どもを見ると心が和むヨ、いや、ジッサイ。

小一時間も滞在したろうか、勘定の1550円にびっくり。
Cセットが1000円でっせ!
そこにビール大瓶、突き出し、サービスのさつま芋天だヨ。
しかも女将さん、オツリの50円より先に
「よろしかったら、どうぞ!」―
苺ミルクのキャンディーを手のひらに乗せてくれた。
思わず彼女の手を握り締めるJ.C.、っていうのはウッソー!
エニウェイ、良心的な町場のそば屋の姿がそこにあった。

北口駅前の「江戸っ子」は焼きとん酒場。
「花かご」再訪の前にふと立ち寄った。
京成線・立石の飲み屋街に同名店があるが
両者の関係は知らない。

メニュー幅の広い立石に比べ、亀有は焼きとんが主体。
前者は座り飲みだが後者は立ち飲みである。
そんなこともあって縁戚、あるいは姉妹店、
はたまた暖簾分けではないだろう。
一概には決めつけられなくとも何となくそんな気がする。
もっともあちらは”立石のポンパドゥール夫人”の異名をとる、
名物・女将のインパクトがあまりに強くて
二店の雰囲気は違いすぎるものネ。

ビールは一番搾りの大瓶。
初めての訪問につき、
周囲の様子を観察して状況把握に努めなければならない。
ほとんどの客が
1杯360円のボール(ハイボールのこと)を飲んでいる。

名代の焼きとんは1人前4本からで
黙って注文すると、同じ部位が4本まとめてきちゃうみたいだ。
これが”ミックス”、そう一言添えれば、
2種が2本づつ盛合されるしくみらしい。
シロとレバのミックスをたれでお願いしてみた。

=つづく=