2018年12月10日月曜日

第2020話 よだれは出ない よだれ鶏

文京区のコミュニティバス、
B-グル号に揺られてやって来たのはJR駒込駅前。
ちょうど今が盛りの紅葉シーズンで賑わう、
六義園は染井門の正面である。

さくらの花やもみじの葉を愛でる習慣を失いはせぬが
人ゴミ、もとい、人混みは・・・
おっとこれはこの間、使ったばかりでした。
とにかくぎょうさん人々の集まる場所は極力避ける主義。
入口に並ぶ行列を尻目に本郷通りを横断した。

真向かいの「野田焼売店」が本日の第一目標。
このところ晩酌タイムの前倒しが顕著にて
時刻はまだ15時半を過ぎたばかりなのに
早くも飲み始めたい心持ちでいた。
ほとんどの飲食店が中休み真っただ中の時間帯に
通し営業を貫く店舗は救いの神。
あらかじめ目星をつけておいた焼売屋だった。

コンパクトな店内はカウンターとテーブル席が
バランスよく配置されている。
接客の女性にいざなわれてカウンターへ。
瓶ビールはサッポロ黒ラベル。
よどみなく中瓶と焼売(2ヶ)をお願いすると
「ビールを先にお持ちしてもよろしいでしょうか?」
「いいですヨ」
こういう店に居がちな大陸系ではない純日本娘は
もはや貴重な存在と言えよう。

焼売は豚挽き主体に細かい玉ねぎ。
やや大粒でそこそこの美味しさながら特筆には値しない。
普通の白酢のほかにチンキャン・ビネガー(鎮江香醋)なる、
赤酢が用意されており、こちらのほうがより本格的だ。
原料はもち米・麦ふすま・食塩・砂糖とのこと。

当店のもう一つの名物、よだれ鶏を追加した。
その美味しさを知る者は見ただけで
よだれが出るというのが名前の由来。
棒々鶏同様にオリジナルは四川料理で鶏胸肉が使われ、
現地では口水鶏と表記される。
ふ~ん、よだれは中国語で口水なんだネ。

タレに砂糖やみりんを使う棒々鶏は甘味が勝っているが
こちらは黒酢・中国醤油・花椒・豆板醤・辣油などの
酸味と辛味が特徴。
色合いも棒々鶏の薄茶に対して口水鶏は濃茶。
ほとんどチョコレート色である。
だけど、見ただけでよだれは出ないなァ。

きゅうりと香菜があしらわれ、ビールとの相性もよろしい。
紹興酒をいただくつもりだったが、にわかに立て込んで来た。
第二目標もあることだし、ここは席を譲りましょう。
純日本娘にお願いしたお勘定は金1458也。
陽が落ちるまで、つなぎの場を提供してくれたことに対し、
感謝の意を表して店をあとにした。

「野田焼売店」
 東京都文京区本駒込6-24-4
 03-5395-9940