2018年12月11日火曜日

第2021話 紅葉のタタキに牡丹の串焼き

「野田焼売店」をあとにして駒込駅界隈をぶ~らぶら
目当ての「山鯨(さんげい)屋」が開くのは17時。
何とか時間をやり過ごして地下へ下りてゆく。
この店の1階は「巣鴨ときわ食堂」の駒込店。
人気店だけに相変わらず大変な混み具合だ。

開店まもないとうのに「山鯨屋」のカウンターは
7割方埋まっていた。
ここのウリは埼玉県の猟師・新井さんが
撃ち取った群馬の猪と
三重県の罠師・吉田さんが生け捕った三重の鹿である。

サッポロ赤星の中瓶を飲りながら品書きに目を通し、
その間、周囲のやり取りに耳を澄ます。
あれっ、おかしいな、客層はずいぶん若めで
彼らが注文するのはレバだのシロだのカシラだの、
オーソドックスな焼きとんばかりじゃないの。

そんな状況に心変わりするようなJ.C.ではない。
鹿(紅葉)のタタキを2枚、猪(牡丹)の串焼きを1本、
そしてこれも珍しいナマズの串を1本通した。
接客のアンちゃん曰く
「鹿だけ少々お時間かかるかもしれません」
「ああ、いいですヨ」

しばらくして、時間がかかるかも?
そう言われた紅葉が真っ先に運ばれた。
薬味は白胡麻・小ねぎに醤油・練り辛子。
クセや臭みがないけれど、旨みにも欠ける。

ふっくらと焼き上がったナマズは少々水っぽい。
甘みの勝ったタレと粉山椒でいただいた。
厳選された牝猪だけが入荷するという、
牡丹串焼きはちょいとばかり匂った。
自然の恵みは個体差が激しいから
たまたまなのかもしれないが
せっかくの素材が活かされておらず、もったいない印象。

大関の熱燗に切り替え、焼きとんに移行した。
カシラを塩、レバとシロはタレで―。
すべて可も不可もなく、下町の佳店には遠く及ばず。

店内に流れるBGMはずっと美空ひばり。
「川の流れのように」、「愛燦々」など、
晩年の曲ばかりかと思っていたら
「あの丘越えて」がかかった。

♪ 私もひとり ただひとり
   馬(アオ)の背中に 眼をさまし
  イヤッホー イヤッホー  ♪

馬の名前にアオが多いのはどうしてかな?
紅葉、牡丹に続き、次は桜(馬肉)でも食べに行こうかな?

「山鯨屋」
 東京都豊島区駒込3-3-21小松第一ビルB1F
 03-6903-540