2018年12月17日月曜日

第2025話 渾身のミートソース (その1)

浅草の午後、料理自慢の友人とビールを飲んでいて
話題がパスタのスパゲッティに移った。
ここのところカルボナーラにハマッて
自作をいろいろ試してみたり、
あちこち食べ歩いているという。

好きなスパゲッティは?
と問われてこちらは頭の中に何品か思い浮かべる。
ぺぺロンチーノ、ポモドーロ、アマトリチャーナ、
プッタネスカ、ジェノヴェーゼ、ヴォンゴレ、ペスカトーレ、
それぞれに好きだが、ボロネーゼが一番かな?

その旨、伝えると意外そうな顔をされた。
日頃、ウルサいこと言ってるわりには
大したことないわネ、瞳がそうつぶやいている。
フン、ほっとけや。
好きなモンは好きなんだい!

ここでふと気づいた
ボロネーゼの日本版、ミートソースをトンと見掛けなくなった。
高校時代、悪友たちとたびたび喫茶店にシケこんだ。
お茶するためでなく、煙草を喫むためにネ。
そんな店には必ずミートソースとナポリタンがあったものだ。

時は移って・・・ナポリタンはいまだに肩で風切る勢いだが
ミートソースはどうだろう?
ずいぶんと肩身の狭い思いをしているように推察される。
J.C.、ここで膝をポンと打つ。
そうだ、ミートソースを食べに行こう!

どうせ行くならちゃんとしたのを食べたい。
陶器でもステンレスでもかまいはしないが
皿から昭和の匂いが立ち上るようなヤツをネ。

調査に調査を重ねた結果、
白羽の矢を立てた喫茶店は北区・赤羽にあった。
赤羽駅舎のほとんど隣りにあって「友路有」という。
う~ん、どこかで見たことのある字面だなァ。
記憶の糸をたどってみても思い出せない。

どう発音するのかというと、これでトゥモローだとヨ。
カタカナで済むものに
わざわざ漢字をはめ込む手法は野暮の極みながら
旨いモン食いたさに目をつむった。
食欲が理性を駆逐するのは人の世の常なるか。

「友路有」は駅近の本店のほか、すぐそばに2号店、
そして浅草にも支店があるという。
あっ、そうか!
このことを知って初めて思い当るのであった。

=つづく=