2019年5月14日火曜日

第2131話 「岸辺のアルバム」の岸辺へ (その3)

「特一番」のあるリバーサイド・モールから
和泉多摩川駅の反対側、北口に回ってみた。
東京のはずれといえども、さすがに世田谷区の隣り、
ちょいとオサレな雰囲気が漂っている。
フラメンコ・スタジオなんかもあるし、
並びの美容室は「ケ・セラ・セラ」だとサ。

多摩川の岸辺に向かうため、再び南口へ。
横切った改札前にモスバーガーがあった。
各駅しか止まらぬ、小さな駅なのに—。

和泉多摩川通りはプラタナスの街路樹。
プラタナスの並木道となると第一感は
飯田橋から高円寺に達する大久保通り。
都心と違い、クルマが少ないのでのどかなものだ。
前を通り過ぎたラーメン店に10人を超える行列。
「自家製麺つけそば 九六」は界隈屈指の人気店らしい。

視界が一気に開けて多摩川のほとり。
連休中の、それも日曜日とあって
河原には多くの家族連れがピクニック。
バーベキューを楽しむグループが皆無なのは
むやみに火を扱えないのかもしれない。
その代わり、ソース焼きそばの屋台があった。

かつては”あばれ川”の異名を取った多摩川。
ドラマのモチーフともなった洪水の傷痕は
今、どこにも見えない。
満々と水をたたえ、流れはおだやか。
幼い子どもたちが岸辺に下りて水と戯れている。

突然、襲ってきたケモノ臭に辺りを見回すと、
ヤギの親子に加えて仔羊と仔馬。
動物とのふれあいの場になってるんだネ。

1974年の大水害の記憶を後世に残すモニュメント、
多摩川決壊の碑は意外に小さく簡素。
人口密度の高い首都圏で発生した災害ながら
犠牲者を出さなかったのがシンプルの理由だろう。

目の前は二ヶ領用水宿河原堰。
川向こうは川崎市・宿河原である。
水量のわりに静かな川面はこの堰によるもので
1999年に造り替えられ、
現在は四六時中、国交省が水位を監視している。

和泉多摩川駅に戻った。
駅舎はすでに高架化され、
プラットフォームに立っても
「岸辺のアルバム」を偲ぶよすがとてない
入線して来た各駅停車に乗り込み、
多摩川よ、サヨウナラ。

=おしまい=