2019年5月21日火曜日

第2136話 枇杷に鳥貝 鰹に鱸 (その2)

世田谷区・千歳船橋の「旬菜 すがや」。
カウンターで独酌を楽しんでいる。
18時を回って、だんだんに席が埋まり始めた。
白和えの枇杷をつまみ、斬九郎で追いかけると、
果実の甘さのおかげで酒が引き締まる。
そう、飲む酒が甘いと感じたら
甘味のある肴をアテにすればよいのだ。

品書きに生鳥貝を発見。
愛知の産という。
真っ当な鮨屋でもなければ、
なかなかお目に掛かれぬ生とり、無条件で発注した。
発注はしたものの、モノはあまりよくない。
身肉に張りが失われ、ヒモは砂を噛んでいた。

白露垂珠純米吟醸に切り替えた。
一月半前、向丘のスパイスバル「コザブロ」でいただき、
その旨さが記憶に残っている。
こちらは120mlで760円と、斬チャンに比べ、かなり高価だ。
う~ん、やはりこの突き抜けた爽快感が素敵だネ。

勝浦産の鰹刺しを追加。
これにはニンニクのスライスをリクエスト。
色鮮やかではあるものの、惜しむらくは滋味に薄い。
もともと秋の”戻り”より、春の”上り”を好むが
あまりにあっさりし過ぎている。
一計を案じ、取り皿をもらって、白露垂珠を垂らす。
そこへ生醤油を注ぎ、割り箸でステア。
数片の鰹を投じて即席づけの作成に取り掛かった。

待つこと10分。
浸透圧の作用で閉じ込められていた鰹の旨みが開花。
ニンニクを乗せて口元に運べば、瞬時に頬が緩む。
誰が何を言おうと、鰹にはニンニクですな。

山梨県・大月市の笹一酒造による樽酒に移行。
辛口本醸造の逸品である。
こちらは120mlで480円のところ、
プラス200円で正1合をお願いした。

同時に鱸(すずき)カマ元の塩焼きも—。
鱸は好きなサカナで刺身や洗いはもとより、
洋風のカルパッチョ、ムニエル、ポワレ、
極め付きはポール・ボキューズ考案による、
バール・アン・クルート(鱸のパイ包み焼き)になろうか。

筍の蕗味噌焼きを従えたカマ元はまずまずながら
これまた旨味の濃縮感がイマイチ。
そこで鰹の漬けつゆをサッと振りかける。
すると塩焼きは大変身、
とまではいかなくとも中変身を遂げた。
そりゃ、そうだよなァ、
鰹節の代わりに生鰹の出汁だもんねェ。
ちとふなでの晩酌のお代は3440円でありました。

「旬菜 すがや」
 東京都世田谷区船橋1-7-3
 03-6413-5450