2019年5月24日金曜日

第2139話 フラれ降られて令和の元日 (その3)

地下鉄の入口で雨宿り。
というより実際は今後の身の振り方を思案していた。
とにかく今年のGWはよく降るGWだ。
何となく・・・再び門仲をさまよい歩く気力が失くなった。
そのまま改札への階段を降る。

雨が降ったら断トツの候補地は浅草。
何となれば、浅草には
アーケードを備えた商店街が多いからネ。
ロンゲストの新仲見世にショーテストのかんのん通り。
雷門通りの北側、すし屋通りにひさご通りから千束通り。
部分的には国際通りもそうだ。
すぐに思いつくのはそんなとこだが、まだあるかもしれない。
とにかく、浅草はアーケードの街といっても過言ではない。

雷門通りの「酒富士」の暖簾をくぐった。
宵の口につき、客はテーブルに1組きり。
カウンターに人影はなかった。
久しぶりだから懐かしい。

あれは2年前の3月。
ここで豪州娘のブリに遭遇したのだった。
かつ丼のどんぶりを抱えている、
ブリにクジラを食わさせたっけ・・・。
彼女にちなんで、かつ煮皿という手もあったが
それはちょいとムリだろう。

先刻、深川の穴子天丼ともりそばは
どちらも量的に7分目程度だったので
まだイケると意気込んではいたものの、
時間の経過とともに満腹感が訪れていた。
しかし、当店で飲みものだけというわけにはいかない。

何か軽いものということで皮付きべったら漬け(450円)
スーパードライの大瓶と一緒に通す。
ところが、このべったらはちっとも軽くなかった。
小鉢に10切れも盛られてるじゃないの。
大瓶を飲み切るには3~4枚でじゅうぶんなのに—。
いや、マイッたな。

べったら漬けをポリポリやっているうち、
ポツリポツリと客が現れる。
常連もフリも独り飲みばかりである。
彼らに
「一つ、べったらでもいかがですか?」―
なんてことも言えないし・・・。
だんだんに箸を投げ出したくなってきた。

不思議なもので飲むスピードは一向に落ちない。
空瓶を前にして棚に並んだ酒瓶を眺めていた。
見慣れない赤鹿毛(あかかげ)と青鹿毛(あおかげ)に
俄然、興味が湧いてくる。
こやつらはいったい、何者であろうか?
仮面の忍者たちなのであろうか?

=つづく=