2019年8月7日水曜日

第2192話 意外にイケたワイン食堂 (その2)

「ワイン食堂 パパン 御徒町店」のカウンター。
 生ビールを飲み干したとき、
K田サンのジョッキにはまだ半分以上残っていた。
あまりイケるクチではないらしく、
ここは食べるほうに専念していただこうか―。
いや、こちらのピッチが速すぎるんだな。

初めて食べるアリゴが気に入った様子。
グリュイエール・チーズの個性が発揮され、とてもよいデキだ。
皮付きコーンのローストもなかなかでトリュフソースがバッチリ。
4本あるうち、3本を平らげてもらった。

2杯目の中ジョッキを空にして赤ワイン。
モンテプルチアーノ・ダブルッツォを所望する。
相方は白のシャルドネを—。
それぞれ1杯千円弱と安くはないけれど、
そのぶん容量が多い。
日本人特有のケチ臭さとは無縁だ。
こういうのは大変好もしく、他店にもぜひ見倣ってほしい。

何かもう1品と追加したのは鮎のヴァプール。
ヴァプールは蒸気のことだから、いわゆる蒸しもので
当店は緑茶の葉を使用しており、秀でたアイデアといえる。
肝のソースが添えられて、やはり鮎は肝がキモだネ。

2杯目の赤はピノ・ノワール。
相方は白1杯でイナッフらしい。
20時近くになって店内は落ち着くどころか
ますます活気づいてきたから、そろそろ河岸を替えよう。

向かったのは2週前にも訪れた”奥様容認酒蔵”。
そう、「岩手屋支店」だ。
すると、まだ宵の口だってえのに暖簾が引っ込んでいる。
意に介さず引き戸を引いたが、やっぱり駄目だった。
「本店はまだ開いてるよネ?」―店主に訊ねると、
「・・・と、思います」―頼りない返事だが大丈夫だろう。

はたして・・・暖簾はしまわれていなかった。
21時までの営業だそうだ。
ホッと一息ついてサッポロ赤星のグラスを合わせる。
突き出しのひたし豆がみちのくを偲ばせた。

ゆっくりもしていられないので
真鯛の昆布〆とハーモニカの煮つけ、
そして冷えた酔仙の樽酒をお願いしておく。
ハーモニカはカジキマグロの背ビレ付近の身肉。
なるほど、ハーモニカに見えないこともないが
何かのカートリッジみたいだネ。

相方はコイツにずっぽりハマッてしまい、
それこそハーモニカを吹くがごとくにしゃぶり尽くす。
涼しくなったらまた飲みましょう、
再会を約して今宵はこれにてお開き。

「ワイン食堂 パパン 御徒町店」
 東京都台東区上野3-18-2
 03-5826-4439

「岩手屋 本店」
 東京都文京区湯島3-38-8
 03-3836-9588