2019年8月8日木曜日

第2193話 選挙のあとの紹興酒 (その1)

自宅近くのS小学校で参院選の投票を無事済ませ、
その日の晩酌タイムと相成った。
谷中にするか、根津に行くか、
ここ千駄木にとどまるか、三者択一である。

団子坂下の交差点は同時に三崎(さんさき)坂下でもある。
進路を東にとって三崎坂を上り始めようとすると、
たまにお世話になる典型的町中華「砺波」の店先に貼り紙。
イヤな予感がして立ち止まった。

老夫婦二人だけの切盛りで長年頑張ってきたが
いよいよイケなくなったとのこと。
ついてはこの10月いっぱいで閉業するとの挨拶状。
いや、昔の人は律儀だねェ。
まだ3ヶ月も先のハナシなのに早くもご伝達である。

何だか身につまされてしまい、暖簾も出ていることだし、
このまま入店してビールを飲むか?
いや、待て、待て、
ここは誰か、友人を誘ってあらためて出直そう。
いつも麺類ばかりだから一品料理もいただこう。
時間はたっぷり、でもないが、そこそこ残されてるし、
それに「砺波」はキリンラガーしか置いてないからなァ。

先日、目黒の権之助坂で食べたとんかつに不満を残したせいか、
美味いとんかつで冷たいビールが飲みたい。
さすれば、千駄木すずらん通りの「M」あたりかな?
漠然と思い描いていた、まさにそのとき。
ジーンズの携帯にブルブルッとアタリが来た。
のみとも・S代サンからのメールである。
J.C.の縄張りに来ているので
タイミングがよければご一献いかが? とのお誘い。

おい、おい、こちとらの行動パターンを読まれちゃってるな、
そう思ったことだった。
日曜は遠くへ行かないし、ましてやこの日は投票日だ。
メールじゃ、まだるっこしいので電話を掛けた。
谷中銀座の角打ち(座り飲みだけど)酒屋の前で落合う。
さっそくここで生ビール、という手もあるが
何せ、週末の谷中銀座は芋の子を洗うがごとくのごった返し。
ちょいと曲がって入店したのは
これもまた町中華の「一寸亭」である。
店名は「ちょっとてい」と訓ずる。

よお~く冷えたスーパードライのグラスをカチン。
聞けば、一緒に遊びに来ていた友人が体調不良で直帰。
独り残されて昼めしすら食べてないとのこと。
互いに腹ペコとあってはガッツリ食うしかありまっしぇん。
朝起きたときに、こんな一日になるとは夢想だにせなんだ。
予定は未定にありて確定に非じ。
昔のひとはゲに偉大なり。

=つづく=