2019年8月13日火曜日

第2196話 とんかつをもう一度 (その2)

台東区・上野7丁目の「とんかつ 丸一」にいる。
かつてはバイク関連の専門店が軒を連ねていた一画だ。
店の前には首都高速を上に乗っけた昭和通り。
けっして食べもの商売に向いたロケーションではない。
いや、むしろ向かない。

とんかつ屋で「丸一」とくれば、
大田区・大森の名店が思い浮かぶ。
どうやら当店もその流れを汲むらしい。
あちらは常に行列だが、こちらは並んだ客を見たことがない。

およそ10分で配膳されたトレイには
7切れにカットされて存在感あふれるロースかつと一緒に
こんもりのキャベツ千切り、櫛切りレモン1片。
きゅうりと大根、そしてにんじんがちょっぴりのお新香。
豚汁の味噌椀は豚肉の端切れと玉ねぎ・にんじん・ごぼう。
ごはんは大き目の茶碗。
それに瀬戸物の薬味入れに納まった練り辛子である。

濃いきつね色のかつは中までしっかり火が通っている。
最近、流行りの低温揚げタイプではなく、
昔ながらの王道まっしぐらだ。
コロモも肉に密着している。

左端の脂が少ない部分を何もつけず、口元に運ぶ。
それなりの歯応えにして、柔らかくもないが硬くもない。
肉質は上々である。
久しぶりだなァ、こういうとんかつ。
自ずと笑みがこぼれた。

隣りの2切れ目に卓上の塩を一振りし、
辛子を少々塗りつけてパクリ。
おう、おう、いいネ、美味いネ、
とんかつに辛子は欠かせないネ。

3ツ&4ツ目には生醤油をタラリ。
5ツ&6ツ目には中濃くらいかな・・・ソースをトロリ。
脂身いっぱい、7ツ目の右端は多めにドロリ。
これをおかずにすると、ごはんの最後が実に美味いんだ。
なかなかのロースかつだった。
ようやく当たりくじを引くことができた。

ビールをグッとこらえたため、会計は1200円のみ。
表の立て看板は「まる一」の表記だが
レシートには「とんかつ 丸一」とあった。
よって今話では「丸一」を採用した次第だ。

さあ、これから30分余り、
涼みがてらに上野駅構内のエキュートと
御徒町「吉池」をぶらぶら流し、
「味の笛」で冷たい生ビールをググッと飲ろう。
その瞬間のために今日を生きてるんだからネ。

「とんかつ 丸一」
 東京都台東区上野7-8-22
 3841-6671