2019年8月30日金曜日

第2209話 メキシコ牛のローストビーフ (その2)

日暮里と鶯谷の間に位置する「キッチン フォーク」。
店内はほとんど女子に占領されている。
この国ではちょいとオサレな洋食系や
情緒あるエスニックは”女の都”といってよい。

食事にファッション性を見い出せないどころか、
食卓における作法自体が先進国に遠く及ばない、
日本の男どもは救いようがない。
そもそも茶碗やどんぶりに口を付けて
ワシワシかっ込んでるようじゃ、犬や猿と変わらん。

目を覆いたくなるのが近頃の牛丼のCM。
「吉野家」のことなんだが、どんぶり抱えて
ひたすら口内にめしを詰め込む醜悪な食い方は
とてもじゃないが欧米人に見せられたものではない。
幼少時の躾は本当に大切なのだ。
来年は東京オリンピック。
今にも増してインバウンドの波が押し寄せる。
バッドマナーは国を挙げて早急に是正せねばなるまい。
 
オーダーしたグラスのスーパードライと
スモールサイズのロービー丼がサーヴされた。
トレイにはメインプレートの周りに
スープ、サラダ、ピクルスが配されている。

スープはトマトベースのコンソメでキャベツがたっぷり。
サラダはキャベツ・レタス・にんじん・貝割れに
超薄切りのプレスハムのイタリアンドレッシング。
ピクルスはにんじん・大根・ゴーヤ・蓮根が少しづつ
野菜類が充実しており、こんなところも女子受けする。

ロービー丼はどんぶりではなく、
平たい皿に円く盛ったライスを薄切りのビーフで包んだもの。
水菜・にんじん・小口ねぎが散り、レフォールが添えてある。
醤油ベースに牛骨のゼラチンだろうか、
トロみのかかったソースがヤケにしょっぱい。
ビーフの下に隠れていた温泉玉子を
つぶして混ぜてようやくバランスがとれた。

色鮮やかだが旨みに薄い牛肉は何処の産であろうか?
接客の女性に訊ねると、若姫牛とのこと。
ん? 若姫牛? おお、数ヶ月前に
葛飾区・青砥のスーパーで買い求めたのが
この若姫牛のステーキ用ザブトンだった。
そう、ビーフ・フロム・メキシコである。

グレイン・フェッドにつき、イヤな青臭さとは無縁ながら
アッサリし過ぎて、もの足りなさが残る。
とはいえ、サイドの野菜が豊富で費用対効果は上々。
オッサンは食べました。
あとは支払いを済ませ、立ち去るのみでありました。

「匠のローストビーフ キッチン フォーク」
 東京都台東区根岸2-21-14
 03-6458-1229