2020年3月5日木曜日

第2343話 東京最古の商店街にて (その1)

秋田・久保田藩主、
佐竹氏ゆかりの佐竹商店街(台東区・台東)は
日本で二番目に古い商店街であるそうな。
一番は加賀百万石のお膝元、
金沢の片町商店街とのことだから
東京最古はファミリーロード サタケの愛称を持つ、
ここ佐竹商店街で決まりだろう。

ひと昔前、台東区・柳橋に棲んでいた頃。
わが遊び場は、一に浅草、二に銀座、
三、四がなくて、五に上野だった。
浅草と上野は楽勝の徒歩圏内。
自宅から上野広小路へと歩く道筋で
たびたび通ったのが
鳥越おかず横丁経由、佐竹商店街へ抜けるルートだ。

しかし、ルートはあくまでもルートであって
単なる通過点に過ぎず、
一食・一飲・一憩に及ぶことは極めてまれだった。
そんななか唯一の例外が喫茶&軽食の「白根屋」。
といってもホンの数回のことで
当時はコーヒーを口にしなかったから
ビールを飲んだり、ラーメンをすすったり、
商店街の佇まいに溶け込む当店で寛いだ。

とある午後の散歩の途中、
商店街を抜けかかって「白根屋」の店先に―。
道連れのガラケーは14時前を指している。
そうだ、久しぶりにランチといってみよう。

ピークは過ぎているのにけっこうな賑わいである。
大き目のテーブルに相席となった。
ザッとメニューに目を通し
ラーメン&小カレーのセット(670円)を注文する

食べた記憶はあっても味を忘れたラーメンを彩るのは
もも肉チャーシュー、シナチク、ナルト、
ほうれん草、焼き海苔、ゆで玉子のスライス。
玉子以外は昔の支那そばの常連がこぞって顔を見せている。
薄味のスープとやわやわの細麺が
ボケ気味ながら別段の不満はない

一方のカレーは蕎麦屋風のイエロー・カラー。
豚小間、玉ねぎ、にんじんの具材に赤い福神漬け。
可も不可もナシといったところか―。
 
それにしてもこの時間にどこから湧き出たものか
次から次と来店客が引っ切りなし。
さしたる人通りもない商店街に
当店だけは異様に人口密度が高いのだった。
 
=つづく=