2020年3月13日金曜日

第2349話 南の島の風が吹く (その1)

最近はわりと遠出して軽くランチを食べたあと、
長距離散歩を始めることが多い。
その際には馴染みの薄い道筋を往く。
住宅街は面白くも何ともないので
なるべく商店街を歩くが
都内に未踏の商店街はほとんど残っていない。

この日の目的地は京王井之頭線・西永福。
十数年前に素通りしただけで散策まではしていない。
両隣りの永福町と浜田山は比較的大きな町だから
何度か訪れているが西永福は盲点になっていた。

通常は小田急線で下北沢に行き、
井の頭線に乗り換えるところ、
メトロ丸ノ内線の南阿佐ヶ谷から歩くことにした。
途中に商店街などまったくないし、
距離も相当だけれど、昼めし前の一歩きを敢行する。

善福寺川をまたぎ、和田堀公園を突っ切った。
大宮八幡に立ち寄る手もあったが
空腹感に押し切られて直行を決断する。
方南通りと井ノ頭通りが交わる西永福の交差点で
見慣れたロゴのビルディングに出くわした。
日頃、ときどきお世話になるスーパー、
サミットの本社がこんなところにあった。

駅前の短い商店街に入り、すぐ見つけたのは
本日のターゲット、「スペキエ」。
評判のよいカレーハウスである。
南阿佐ヶ谷駅からの所要時間は45分だった。

入店すると立待ち客が1名。
14時近いのに満席で休日のせいか地元の家族連れが目立つ。
スタッフは夫婦ではなさそうな男女とバイト風娘の計3人。
全員が国産である。
てっきりインドカレーの店と思ったのは早とちり。
店内に漂う匂いもインドやネパールのそれとは異なる。

ほどなく待ち客と一緒にカウンターへ案内されて横並び。
卓上には洋酒のボトルが並んでいる。
ペルノーなんてシャレたのも混じるが、ほとんどラム酒。
パナマ産からハイチ産、果てはマルティニーク産までも―。
マルティニークは西インド諸島の小島でフランスの海外県。
当店は夜の帳が落ちると、バーも兼ねるようだ。

主なメニューは、チキンカレー、キーマカレー、
キーマ&エビの2品カレー。
それに加えてタコライスとジャークチキンライス。
このおかげで店内に南の島の風が吹き、
何となくゴキゲンになるJ.C.であった。

=づづく=